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貿易取引において、物品の移動に関する手続の合理化・簡易化は、必然的に代金の決済に関する手続の合理化・簡易化をも促すことになります。電子貿易取引の普及にとって、貿易取引関係者の関心は、荷為替信用状及び荷為替手形制度に代わる電子決済制度の確立です。どのような商取引でも、まず取引相手の信用確認が大切であることは、将来も変わりありません。否、むしろこれまで以上に必要になるでしょう。電子商取引時代には、信用調査機関や保証機関がこれまで以上に発達するかもしれません。認証機関は何も信用を供与したり、取引の保証を引受けてくれませんから。電子メッセージによる貨物情報の提供と引き換えに、代金を確実に回収できるメカニズムの構築が、電子貿易取引の発展を左右する鍵になると考えます。

ICCでは、最近、インコタームズと信用状統一規則をほぼ10年ごとに改訂しています。前者は、1980年、1990年および2000年に改訂され、後者は、1974年、1983年、1993年に改訂されています。1990年と2000年のインコタームズには、紙の書類に代えて電子メッセージが導入されたことは、すでに述べたとおりです。そこで、1993年の信用状統一規則の改訂に際して電子メッセージがどのような形式で導入されるか関心がありましたが、結局は見送られることになりました。次の改訂は若干遅れるようですが、やはり電子メッセージの導入が一番議論されることでしょうし、また最も難しい問題です。

ICCは、電子商取引プロジェクト(ECP)の一環として、1998年以来「電子貿易・決済に関する統一規則及び指針」(Uniform Rules and Guideline for Electronic Trade and Settlement; URGETS)の作成に取り組んできました。98年の第1次案(URETS)は非常に膨大な頁数で詳細な解説書的な内容でしたが、第2案(1999年版)は前者の10分の1位に縮小され、1]総則、2]ビジネスの基本条件および3]契約条項の3部からなっていました。しかし、その内容は類似する条項が繰り返し使用されており、全体の構成は規則として相応しくないとの批判が各界から提出されましたので、再度検討した結果、第3案(2000年版; URGETSと改称)が作成されました。しかし、全体の構成・内容は、国連勧告第31号「モデル電子商取引協定書」に酷似しているので、国連CEFACTは、勧告第31号とURGETSが抵触しないよう、ICCと調整を進めていました。ICCは、各国からの意見を受け入れて、これまでの作業を中止し、改めて、今後の方針について検討するとのことです。現行の荷為替手形制度に代わる、電子貿易・決済ルールの確立が早急に求められています。

 

3.3.2 CEFACT/LWGの作業計画

冒頭に述べたとおり、わが国では、Sea-NACCS、JETRAS、PortEDI等の行政システムが稼働し、一方、BOLEROやTEDIといった貿易システムも業務を開始したので、輸出入手続だけでなく、電子貿易取引も急速に伸びることが期待されています。

 

 

 

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