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売主は、物品の船積み後、この船積書類と為替手形を一緒に買主(または発行銀行)に呈示して、手形の引受・支払と引き換えに代金を回収するという取引慣習が発達し、これによって当事者は安心して貿易取引に従事することができるのです。現行の典型的貿易取引形態および荷為替手形の機能については冒頭に概説したとおりですが、これは19世紀における商人のすばらしい発明であると称賛されています。第1次世界大戦終結後の世界経済の復興・発展を図る目的で1920年に国際商業会議所がパリに設立され、新しい時代の貿易取引ルールを作りました。ICCは幾多のすぐれた成果を発表していますが、特に1933年に発表された「荷為替信用状に関する統一規則及び慣例」、1936年に制定された物品引渡条件に関する国際規則である「インコタームズ」がその後の世界の貿易取引の発展に大いに貢献しました。

しかし、60年代にはコンテナ輸送が導入され、また70年代には航空機による定期貨物輸送が開始されて、新しい国際物流がグローバルに展開されるようになりました。さらに、情報通信技術の目覚ましい発展によって、紙の書類に代わって電子メッセージが伝送されるようになった今日、一世紀前の在来船時代の取引慣習にいつまでも頼るわけにはいきません。コンテナ貨物の取引は、在来船慣習であるFOB、C&F(CFR)またはCIF条件によるよりも、FCA、CPTまたはCIP条件による方が、物品に係わる費用および危険に関する問題を明確に処理することができるので、後者のグループの取引条件を使用することが適切です。しかし、これらの新しい取引条件がインコタームズに導入されてから20年も経過しているのに、何故もっと普及しないのでしょうか。前記のように、国連勧告第12号は、運送途上で物品の売買が行われる場合を除いて、船荷証券に代えて非流通性の海上運送状の使用促進を勧告しています。インコタームズも、コンテナ輸送や複合一貫輸送の場合のように、物品の引渡が本船の手摺りの通過と関係がない取引では、FOB、CFRまたはCIF条件に代えて、それぞれFCA、CPTまたはCIP条件を使用することを勧めており、むしろ、このような場合に、FOB等の条件を使用すべきではないと強く警告しています35

 

3.3 電子貿易取引ルール構築への取組み

 

3.3.1 ICCにおける電子商取引の取組み

国連ECE事務局の定義によると、貿易手続とは、貿易における「物品の移動」に必要とされるデータの収集、提供、通信および処理に関わる活動、慣習および公的手続であると説明されています。

 

35 2000年インコタームズ、「序論」18.推奨する使用方法。なお、FOB、CFRおよびCIF条件の概要説明を参照されたい。

 

 

 

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