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表2と表3を見ると、揚地売買条件であるD類型の取引条件は殆ど使用されていないと言ってよいでしょう。また、船側渡条件(FAS)もあまり使用されないようです。在来船の取引条件であるFOBは、VとOを合わせると、表2では94.4%、表3では99.3%です。同様に、CFRは、前者では83.0%、後者では83.9%、また、CIFはそれぞれ91.9%、99.2%という高い使用率になっています。新しい輸送形態の取引条件では、表2および表3で、VとOの合計したものをみると、FCAは、それぞれ75.7%、76.5%、CPTは、65.9%、72.6%、また、CIPは、65.4%、68.8%と、いずれも高い使用率であることが分かります。その他の取引条件で以外に使用率の高いのがEXWで、80.4%および88.1%となっています。しかし、他の設問の回答を見ると、FOB条件をコンテナ輸送、航空運送、鉄道運送等に使用したり、CIF条件をコンテナ輸送に使用し、しかも特約条項を設けないという回答が相当あります。最近におけるわが国の貿易関連業界の定型取引条件利用状況を見ると、海上輸送はもちろんのこと、航空輸送の場合でも、ほとんどの輸出入取引がFOB、C&F(CFR)およびCIFの3つの取引条件で行われています31

 

3.2.4 CIFの利用度が高い理由

在来船による海上運送貨物の取引条件としてFOB、C&F(CFR)およびCIFが発達したのですが、コンテナ輸送の普及により、ICC国際商慣習委員会の調査に基づいて、作成されたのがFCA、CPTおよびCIPです。英国では、FOB条件の取引は19世紀初頭に見られますし、CIFの最初の判例は1862年のTregelles対Sewell事件32であると言われています。当時のFOB条件やCIF条件では、物品が船積港において本船の手摺り(ship's rail)を通過したとき、売主が引渡の義務を果たしたことになるというものでした。また、売主は、原則として、物品が本船の手摺りを通過するまで、これに関する一切の費用および滅失または損傷の危険を負担しなければなりません。今日でも、これらの取引条件については、このような伝統的な解釈が残っています33

さらに、CIF条件では、売主は、指定仕向港まで海上運送の手配を行い、物品を船積みして運賃を支払い、無故障の船荷証券を取得し、海上保険契約を結び保険料を支払って保険証券を取得して、船荷証券、保険証券および商業送り状を一緒に買主に提供する義務を負い、また買主は、売主の提供した船積書類が契約に一致するときは、これを受領して、引換えに代金を支払う義務を負います。この基本的義務は、1953年インコタームズには明確に規定されていました34

 

31 小林晃「総合商社A社の使用するトレード・タームズの地域、国別分析」『経済集志』第68巻第1号、1998年4月、107〜110頁。

32 Tregelles v. Sewell (1862), 7 H. & N. 574. この事件に係わる取引では、“delivered at Harburgh, cost, including freight and insurance”という条件が用いられていました。

33 前掲の脚注1)および2)を参照。

34 1953年インコタームズ。売主の義務第7項および買主の義務第1項。また、1932年国際法協会制定のCIF契約に関するワルソー・オックスフォード規則の規則16および規則18にも同様の規定があります。

 

 

 

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