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したがって、この解決策には、このような目的を達成できるような内容の契約書を作成することが必要になります。しかし、多数のユーザーが双務的に契約を締結することは不可能です。特に、それ以前にまったく面識のなかった当事者に船荷証券を譲渡する場合も考慮に入れなければなりません。そこで、この問題の解決策として、MANDATEプロジェクトの研究成果に基づいて、本プロジェクトでは、BOLEROユーザー協会(the Bolero User Association Ltd.)を結成し、協会の定款の一部にこの契約を組み入れることを提案しています。この契約はルールブック(Rule Book)と呼ばれるものです。このような協会の全てのメンバーは、その定款に拘束されるだけでなく、各メンバーとその他の全てのメンバーとの間の契約関係が設定されることになり、電子式船荷証券による安全な取引を実施することができます。この協会は、メンバー相互間の安全な取引を保証する契約上のフレームワークを設定する媒体となります。

 

2.6.3 本プロジェクトの長所と短所

BOLEROが提供するサービスを利用することにより、1]船荷証券(または運送状)を登録するコストが、現在の紙の書類を作成・提出するコストよりも低くなること、2]これまでの独立したシステムと異なり、このシステムでは、電子的に「流通性」が安全に保証されるので、銀行にとっては、決済と貿易金融取引に関するSWIFTメッセージの伝送もできるし、また電子商取引における新しい金融サービスの提供が可能になること、3]このシステム・サービスにより、無登録書類(例えば、船積指図書、商業送り状等)のメッセージは取引当事者間で直接伝送することができること等がメリットとして挙げられています。

けれども、これを実施するためには、電子書類を受け入れることができる十分な数の取引参加者がユーザー協会のメンバーになる必要があります。一人の荷主にとって、複数の運送人、フレイトフォワーダー、銀行、取引先の貿易業者等の参加が必要です。BOLEROプロジェクトは、一応、ヨーロッパの貿易関係業者のための流通性船荷証券の電子化計画でありましたが、取引相手方は海外諸国に散在していることから、少なくとも主要貿易国の貿易関係業者が多数これに参加することが商業的実用化の前提条件であると考えられます。また、法的なルールブックの使用が各国の業界に広く受け入れられることも必要です。貿易関係業界または企業では、多くの異なるメッセージフォーマットやEDI標準を使用しているので、長期的に見た場合、貿易取引においてUN/EDIFACT標準の国際的使用の普及が、提供するサービスの効率を高め、コストを軽減することに大きな影響を与えることになります。

 

 

 

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