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2.6 BOLEROプロジェクトの電子式船荷証券

 

2.6.1 CMI規則に拠る電子式船荷証券の実験

BOLEROプロジェクトは、「Boleroフェーズ1」と呼ばれる実現可能性調査を4ヶ月間実施した後、1994年4月からシステム設計、開発およびユーザートレイニングを順次行い、「Boleroフェーズ2」である国際的パイロットテストを1995年7月〜9月に実施しました。このパイロットテストでは、中央登録機関を中核とするユーザークラブを組織して、参加した輸出入業者、フレイトフォワーダー、船会社、銀行間における電子式船荷証券の発行、譲渡等の実験が行われました。このテストには、電気通信およびメッセージ伝送の国際標準(X.400、X.500およびUN/EDIFACT標準)、委託第三者(Trusted Third Party; TTP)と関連して用いるセキュリティ技術およびデジタル署名が使用されています。

流通性船荷証券は、すべての貿易国において制定法によって規制されており、また一連の国際条約の対象でもあります。そこで、BOLEROプロジェクトでは、書面形式の船荷証券を使用して取引した場合に有したものと全く同じ権利・義務を電子式船荷証券に関与するすべての当事者に具現することを目的としているので、実行可能な電子的解決策を開発するために、まずヨーロッパ諸国の法律上の問題を検討し、法的解決策として「電子式船荷証券に関するCMI規則」を採択しました。

前記のとおり、CMI規則ではTTPの機能を運送人に期待していますが、本プロジェクトでは完全に中立的立場にある関係者によって運営される複合的TTPの概念を取り入れています。また、本プロジェクトは、メッセージの安全な交換を保証するために、デジタル署名を基礎にしています。

 

2.6.2 BOLEROユーザー協会とルールブック

このように改良されたCMI規則に基づく論理的メッセージ伝送シナリオによって、本プロジェクトは、海上運送貨物に関する権利の発生、移転および貨物の受戻しについて安全な解決策を提供することを可能にしています。特に、流通性船荷証券の本質であり、これまでに実施された方法では取扱うことが不可能であった「貨物引渡請求権」について安全な解決策を提供しています。この解決策は多くの国で受け入れられるものですが、法律によって「船荷証券とは、手書き署名のある書面形式の書類である」と規定している国では、本プロジェクトの船荷証券に係わる紛争が訴訟に持ち込まれた場合に、これが支持されないことが考えられます。そこで、すべての関係当事者が、「本システムの使用は、書面形式の船荷証券を用いて取引した場合と同様の立場に各当事者を置くことを意味する」旨をあらかじめ約束しておかなければならないのです。

 

 

 

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