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2.4.5 CMI規則で想定されている取引

本規則は、海上部分を含む運送契約であれば如何なるものでも対象となりうるように作成されていますが、運送中に転売される可能性のある原料・燃料等に使用されることを予想して作成されたものです。したがって、海上運送中に転売されることのない個品運送貨物については、海上運送状の電子メッセージで十分であると考えられます21

 

2.4.6 CMI規則における登録機関

本規則では、運送契約に関するデータを保存・登録し、現権利者からの通知を受けて新権利者にデータを伝送する登録機関に、運送人がなることになっています。CMI作業部会では、最初は登録機関に銀行を想定していたのですが、1982年にチェース・マンハッタン銀行が構想し、参加者に呼びかけていたSEADOCシステムという構想でも、登録機関は同銀行でした。しかし、SEADOCシステムが挫折したのは、資金の流れと物の流れが銀行に把握されるのを企業が嫌がったからであるという点について、同作業部会の意見が一致し、運送人が登録機関となる方が企業の抵抗が小さいであろうとの判断になったとのことです。また、運送契約上の債務者である運送人に対して権利移転の通知がなされるシステムは、法的にみれば、第三者(銀行)に対して通知がなされるシステムに比べて、指図による占有移転(民法184条)がなされたという法律構成がしやすいというメリットもあります。他方、経済的観点から、運送人が当該システム構築に要する資金的負担の問題であるとか、また、運送契約の当事者である運送人が登録機関になると、データを自己の有利に改ざんするおそれがないかという問題があります。後者の問題は、技術的な方法で改ざん防止を行うことが可能です。

 

2.5 流通性書類のEDI化への取組み

 

2.5.1 国連ECE/WP.4における流通性書類問題への取組み

国連ECE/WP.4は、1991年の第33回会期において、「貿易データ交換の法的諸問題」(TRADE/WP.4/R.697)を採択しました。この文書には、貿易手続簡易化の商業的及び法的側面に関する6つの活動計画が示されており、その最優先順位に交換協定書が挙げられていましたが、これは1995年の第41回会期で国連ECE勧告第26号(TRADE/WP.4/R.1133)として採択されました。次いで、WP.4の法律問題ラポーター・チームは、流通性書類の検討作業に着手しました。同ラポーター・チームでは、主として欧州における各種プロジェクトの情報が報告され、その中には、1]ICCの電子式信用状に関するE-100計画、2]SITPROの電子式信用状に関する提案、3]欧州委員会の3つのプロジェクト、4]UNCITRALの流通性書類に関する作業計画などが含まれていました。

 

21 三倉八市「貿易取引とSWB利用の現況」、日本貿易関係手続簡易化協会『平成9年度EDI制度手続簡易化特別委員会報告書』(1998年3月刊)、138〜153頁所収。

 

 

 

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