日本財団 図書館


CMI規則の電子式船荷証券は、前記2つのシステムを含めて今までに開発されたいくつかのシステムの中で最も進んだ電子式船荷証券に関する開放型システムを意図したものです。それは、加入銀行だけが利用できるSWIFTのような閉鎖的システムと異なり、関係当事者が特定のルールに従って取引を行う旨の多角的なEDI交換協定(いわゆるフレームワーク契約)を締結する場合に適用される自主的ルールの形式をとっています。こうしたシステムは、EDIを使用する取引において最も一般的に利用される契約的アプローチ(contractual approach)と一致する方式です。

 

2.4.4 CMI規則の電子的船荷証券の問題点

けれども、書面形式の船荷証券上の記載内容に該当する受取メッセージに示されている権利の受諾と署名に該当する個人キーの取得という権利移転の仕組みをもって、従来の船荷証券の流通性を創り出すことができるか否か若干の問題が残ります。それは、1]船荷証券の記載内容は運送人が管理するので、果たして個人キーを含む受取メッセージが譲受人にとって運送品に関する決定的証拠になるかということ、2]個人キーによって行われる権利移転の際に運送人による現在の所持人の個人キーの破棄と権利の譲受人への新しい個人キーの発給の間における時間的ずれが生じた場合は、従来のような同時的な権利の移転とはならないこと、また3]個人キーの善意の譲受人に、従来の船荷証券のように、運送人に対する貨物引渡請求権をはじめとする運送契約上の権利が移転されるようになっている場合に、中央登録機関の承認がないまま第三者に個人キーが詐欺的に移転される可能性を排除できないこと等です。

CMI規則は強行法規ではないので、受取メッセージと個人キーで構成される電子式船荷証券が従来の書面形式の船荷証券と同様の効果をもつという規定(第7条)だけでは、書面形式の船荷証券と同様の法的効力を付与することに問題があり、そのためには関連法の制定が必要になります。またCMI規則では、運送契約の約款などは全部伝送することなく、既存の書面形式の船荷証券に記載されている約款を参照せよというように、レファレンスする形式で情報を伝送することになっており(第5条)、また、当事者は当該契約が国内法によって要求される書面によるものではないことを抗弁として主張することが、できないこと(第11条)になっています。これらの点から、各国の船荷証券に関連する国内法がこの規則の効力を認めない恐れが多分に考えられます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION