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2.4.2 個人キーによる権利の電子的移転

1990年の電子式船荷証券に関するCMI規則に定められている電子式船荷証券は、前記のNCITDの方式と異なり、中央登録機関として海上運送人を利用して伝送され、現行の船荷証券の所持人が有するものと同一の権利を享受する資格をもつ当事者が海上運送人に対して行う電子指図システムに基づいています。海上運送貨物の引渡請求権の移転は、現在は、船荷証券の占有を移転する方法で行われていますが、CMI方式では、船荷証券を発行しないで、運送人が同証券の内容を構成する情報を電子的方法によって保存し、暗証番号を認識している権利者の指図に従って譲受人に伝送するという方法で行われます。

このシステムでは、書面形式の船荷証券を発行しないで、それと同じ情報を含んでいる電子書類を中央登録機関である海上運送人によって荷送人の電子アドレスに伝送されることから始まり、最終的な譲受人に至る一連の「権利の電子的移転」が行われるのですが、その要となるのは、権利を表彰する電子式船荷証券の発行・譲渡を可能にする個人キーです。個人キーとは、運送人が荷送人から貨物を受け取った後、国連標準メッセージによって構成される船荷証券に該当する情報を貨物受取メッセージとして電子的方法で荷送人に伝送するときに、一緒に送る秘密コードのことです。個人キーは、数字・文字を組合せたもので、運送人に対する運送品に関連する指図メッセージの真正性と完全性を保証するために使用され(第2条f項)、権利が譲渡される度に変わり、そして個人キーの所持人だけが権利譲渡の指図をする目的で運送人との連絡を取ることができる仕組みになっています(第7条a項)。即ち、個人キーが含まれている貨物の受取メッセージ(または譲渡メッセージ)は流通性船荷証券の機能を果たし、個人キーの有効な所持人にのみ貨物へのアクセス(例えば、引渡請求権、運送品処分権の取得)を可能にさせることを意味します。

 

2.4.3 CMI規則の電子的船荷証券の特徴

CMI規則による電子式船荷証券の特徴として、以下の点が挙げられます。

1] EDIによって書面形式の船荷証券の流通過程を模倣していること、

2] 基本的には、EDIメッセージによる通知とそれに対する確認システムであること、

3] 電子式船荷証券の中央登録機関として海上運送人が設定されていること、

4] 個人キー・システムを導入して電子式船荷証券の流通性を保証していること、

5] CMI規則は条約あるいは強行法規ではないので、当事者間の契約自由の原則に基づいて、当該規則に従って取引を行う旨の合意が行われた場合に適用されること、

6] CMI規則による電子式船荷証券メッセージの伝送には、それに抵触しない限り、当事者間の行動規範としてUNCID規則が採択され、船荷証券のフォーマットとしてUNレイアウトキーが使用され、またUN/EDIFACT標準が適用されること。

 

 

 

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