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そこで、1970年代に海上運送状が使用されるようになりましたが、これは権原証券(document of title)ではなく、物品の受取証と運送契約の証拠としての機能を持っているに過ぎないので、貿易取引のEDI化を実施するために、貨物と運送契約に関する情報を仕向地に電子的に伝送する理想的な書類と考えられ、その電子化が船荷証券の電子化よりも早くから試みられました。

EDIメッセージは、紙の船荷証券に関連する現行の「流通性」(negotiability)という法的性格を伝送することができないので、海上運送貨物の情報を迅速に伝送するために、紙の運送書類の代替として、流通性という機能を取り除いた電子式運送書類を使用するシステム開発が試みられたのです。

例えば、世界最大のコンテナ輸送会社であるAtlantic Container Linesは、運送書類に関する情報を仕向地に電子的に伝送するために“ACL DATAFREIGHT RECEIPT SYSTEM”という一種の海上運送状のEDIシステムを1971年に開発しました。これは、運送中の物品を代金確保の担保に用いない場合にのみ使用するもので、実用化には至りませんでした16

また、1976年にスウェーデンで開発された“Cargo Key Reciept”(CKR)17も一種の海上運送状で、荷送人の「運送品処分権放棄」条項(NODISP)、運送人の「無故障」条項(CLEAN)および「担保」条項(SECURITY)を含んでいることがこのシステムの特徴です。売主は、CKRと引き換えに、売主の取引銀行から貨物代金の代り金を受け取り、同行は荷受人である信用状発行銀行に必要なデータを伝送して、代金の支払引き換えにCKRを引渡します。運送人は着荷通知を荷受人(発行銀行)に伝えると同時に、着荷通知先(買主)にも連絡します。そこで、買主は発行銀行に貨物代金を支払い、同銀行の“Bank Release”によって、運送人から貨物を受け戻すというものです。このシステムも銀行の協力が得られず失敗に終わりましたが、この基本理念は1990年の「海上運送状に関するCMI規則」に反映されています。

 

2.2 流通性運送書類のEDI化

前記のシステムは、仕向港に到着した本船から貨物を迅速に受け戻すために、海上運送状に類似した運送書類のEDI化を試みたものです。

 

16 Roger Henriksen, "The legal aspect of paper-less international trade and transport," 1982, p.100.

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