しかし、原料・燃料・食糧等のいわゆる国際商品取引では、しばしば海上運送中に積荷の転売が行われることがあり、このような取引は、運送書類の流通性という機能を抜きにしては、実施することが難しいので、船荷証券の原本性、唯一性、真正性、完全性等に関する電子的等価物を商業的に実施するためのプロジェクトが検討されました。
これらのプロジェクトの中に、次のものがあります18。
1] チェース・マンハッタン銀行(the Chase Manhattan Bank)の“Seadocs-scheme”(1982年)
2] 万国海法会(CMI)の「電子式船荷証券に関するCMI規則」(1990年)
3] 国際独立タンカー船主協会(INTERTANKO)の“Electronic Data Interchange re: Bill of Lading for Oil Cargoes”(1990年)
4] NCITDの電子式船荷証券(1990年)
5] BIMCO(the Baltic and International Maritime Conference)の電子式船荷証券プロジェクト。本プロジェクトは、EDIFACTメッセージ、CMI規則およびUNCID規則に基づいて構築されています。CMI規則が秘密鍵方式に基づいているのに対して、BIMCOのEDI委員会は、CMI規則の抱えている問題は中央登録機関によって解決できると考えました。
この他、欧州委員会の委託によるBOLEROプロジェクトがあります。以下、NCITDの電子式船荷証券、電子式船荷証券に関するCMI規則およびBOLEROプロジェクトについて概要を述べます。
2.3 NCITDの電子式船荷証券
2.3.1 NCITDの電子式船荷証券に関する提案
海上運送状のEDI化によって達成できなかった「流通性」を如何にして電子化するかという試みがこれまでに行われてきました。即ち、現行の流通性船荷証券のもつ1]貨物の受取証、2]運送契約の証拠、3]権原証券という3つの性質を電子的に実現する方法についてこれまでに研究開発が進められてきたのです。
NCITD(米国貿易手続簡易化委員会)の法律問題作業部会は、船荷証券のような流通性書類を使用する取引慣習および船荷証券それ自体を廃止する可能性に関する調査・研究に着手したのですが、特定の取引では代金決済と権利移転のために、依然として船荷証券のもつ「流通性」が必要であるとの結論に達したのです。
18 RECOMMENDATION No.12/Rev.1, para.27。