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さらに、「貿易手続簡易化の目的は、1]情報を流れ易くすること、2]誤謬をなくすこと、3]取引と運送の手続をより密接に関連づけること、4]必要な情報を最小限にすること、および5]避け難い公的な管理その他の干渉による遅延をできるだけ小さくすること」であると述べられています10

 

1.3.2 UNSMの開発と法的環境整備

1960年に発足した国連ECE/WP.4は、当初は主としてUNLKの開発とこれに基づく貿易関係書類の標準化と統合化に取り組んでいました。しかし、70年代に入ると、貿易業務の処理にADP(自動データ処理)技術を導入する問題が多く取り上げられるようになります。輸出入通関情報や海上輸送貨物情報のADP処理に見られるように、最初は、コンピュータによる自動データ処理に重点が置かれていましたが、UNLKによるフォーマットの標準化に加えて、総合的な貿易関係取引における貨物およびサービス・金・情報のフローを分析して、データエレメントの統一化および国際標準コードの作成・開発が行われ、さらに即時通信システムと連結したワードプロセッサーの出現により、従来の紙ベースの書類を電子書類に置き換える作業計画が積極的に展開されました。

国連ECE/WP.4は、「書類とは、データ・キャリヤーであり、それにデータが記録されており、そのデータは、一般に、不変かつ人または機械によって読むことのできるものであり」、「また、データ・キャリヤーとは、データの保存および/または運搬を目的とするデータの媒体である」と定義し、「電子書類とは、機能的側面から、EDIメッセージである」と述べています11。現在、国連標準メッセージ(United Nations Standard Messages; UNSM)は、受発注、物品管理、輸送、通関、金融、保険等の分野で合計203種類が開発されており、そのほかに開発途上のメッセージが40種類あります12

ここで問題になるのは、紙の書類の中には、単に記載されているデータ(情報)を伝達するだけのものと、財産的価値を有する私権を表彰し、その権利の発生、移転および行使を当該書類によってのみ行うもの(流通証券)があります。後者については、取引の安全・確実を図るために、いずれの国でも制定法によって規制しています。これらの書類に代えてEDIメッセージを使用する場合、EDI取引に適用され、これを促進するような新しい法律の制定ないし現行法規の改正が必要であるにもかかわらず、これを直ちに期待することは大変難しいので、取引当事者が安心してEDIを導入できるような法的環境をどのようにして構築するかが重要な課題となります。

 

10 UN/RECOMMENDATION No.4, "National Trade Facilitation Organs - Arrangements at National Level to Coordinate Work on Facilitation of Trade Procedures," para.12, TRADE/WP.4/INF.33, September 1974 (Rev.1996). UN/RECOMMENDATION No.18, "Facilitation Measures related to International Trade Procedures," paras.5 and 10, ECE/TRADE/141/Rev.1, September 1982 (Rev.1996).

11 "Definition of An Electronic Document," TRADE/WP.4/R.649, 22 December 1989.

12 "Directory D.00B." UNSMs(国連標準メッセージ)開発経緯一覧表(2000-9)については、(財)日本貿易関係手続簡易化協会「JASTPRO 2000〜2001」57〜62頁を参照されたい。

 

 

 

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