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1.2 貿易手続簡易化の必要性

 

1.2.1 UNLKとUN/EDIFACTの開発

指図式船荷証券と為替手形を一緒に直接買主宛てに送付することは、種々の危険が予想されるので、実務上、売主は、為替手形と船積書類を輸出地の為替銀行に持参して、取立または買取の依頼を行います。さらに、荷為替信用状やトラスト・レシートの発達が輸出入取引の拡大促進に大いに貢献しました。このような貿易取引形態によって、今日の貿易取引の驚異的な発展を見ることができたことは否定できない事実です。しかし、外国の取引相手との間で安全・確実・的確な物品引渡と代金支払を期待するためには、物品の輸出入に係る許認可・通関手続のほかに、港湾における船積・船卸の手続、運送契約、保険契約、荷為替信用状の開設・接受、荷為替取組み等の各種の手続が必要なので、そのための書類作成が大変な仕事になってきました。そのために、書類作成の費用・労力・時間の増大が輸出手続の遅延の原因となり、また輸出コストの増加要因と考えられるようになりました。

このような深刻な状況を解決するために、貿易手続簡素化が急務と考えられて、1960年に国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下に、現在のCEFACTの前身である貿易手続簡易化作業部会(国連ECE/WP.4)が設置されたのです。1963年に貿易関係書類の基準となる国連レイアウトキー5が公布され、船荷証券や輸出申告書などの貿易関係書類の書式の標準化・統合化が70年代にほぼ達成されました6。一方、70年代に入ると、迅速かつ効率的な自動データ処理およびデータ伝送の利用を図ることにより、貿易・運輸の簡易化を促進する諸方策の調査・研究が付託され、そのためにWP.4の組織と機能の強化が行われました。その成果の一つとして、WP.4の1978年9月会期にデータ交換に関する作業チーム(GE.1)の「TDIに関するシンタックスルール案」7および米国政府の「米国EDI標準」8が提出されました。そこで、世界的に統一されたEDI標準を作る目的で、国連ECEと米国の専門家から成る合同作業グループが設立され、その成果が、1987年3月のWP.4第25回会期で、「行政、商業及び運輸のための電子データ交換に関する国連規則」(UN/EDIFACT)という名称で報告され、満場一致の承認を得ました。

 

5 最初は“ECE Layout Key”と呼ばれていたが、1978年に「貿易書類のための国連レイアウトキー」(United Nations Layout Key; UNLK)と改称され、1981年に国連勧告第1号として公布されました。UN/RECOMMENDATIONA No.1, "United Nations Layout Key for Trade Documents." ECE/TRADE/137. March 1981.

6 このUNLKに基づいて標準化された書式に、国際海運会議所(ICS)の標準船荷証券(1963年)、万国郵便連合(UPU)の郵便小包送付案内と輸出申告書(1964年)、関税協力理事会(CCC)の輸出申告書(1968年)その他があります。JASTPROは、UNLKに準拠した日本貿易関係書式を70年代後半から90年代初めにかけて開発しています。

7 "Proposed Interim Syntax Rules for Trade Data Interchange," TRADE/WP.4/GE.1/R.106.

8 "United States Electronic Data Interchange Standards," TRADE/WP.4/R.113.

 

 

 

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