日本財団 図書館


移送開始を自動で行なうか、人が判断するかの問題は残されており、いずれにせよ監視制御装置の信頼性がポイントとなる。

(2) 船殻強度

タンクの圧力を監視する場合、各タンクを他のタンクと独立した状態とする必要がある。この時、各タンク共通のイナートガス管またはベント管に装備されているPVブレーカーは作動しないので、タンクが損傷すると過度のバキューム状態となる。これは、油流出の観点からは流出量が減少する方向で好ましいが、船殻強度上は厳しい状態である。

一般的には、船殻部材が崩壊するまでには設計上かなり余裕があり、たとえ損傷を起こすとしても甲板部分であると考えられるが、万一隔壁が損傷すると被害が増大することになるので、強度のチェックは必要である。

(3) 移送による船体沈下および横傾斜

移送を行なうと船体沈下や横傾斜が大きくなる可能性がある。これらが2次的被害を引き起こすことも考えられるので、沈下量や復原性を確認しておく必要がある。

特に、座礁時には船の脱出が困難になる危険が伴う。これはダブルハルタンカーにも言えることであり、ダブルハルの規則化の際に議論されたはずであるが、本基準案の規則化に当たっても確認しておくべき問題である。

 

2.5.2 既存条約に関する問題

基準案を国際条約に盛込もうとすると、現条約との整合性を考えておかなければならない。現条約との整合性で問題となるのは次の4点である。

(1) 分離バラストタンクの要件(MARPOL)

現MARPOLではバラストタンクは貨物油タンクと完全に分離することが要求されている。したがって、移送管で貨物油タンクとバラストタンクを接続することはこの要件を満たさない。たとえ移送配管に二重のバルブを設けるとしても絶対に漏れないとは言い切れないので、貨物油タンクとバラストタンクを接続すること自体が分離バラストタンクの基本的な思想に反することになる。

(2) PRE-MARPOL船への対応(MARPOL)

本研究で検討してきた移送装置およびその基準案は、移送可能なバラストタンクが十分にある分離バラストタンクの要件を満足した船(POST-MARPOL船)を対象と考えてきた。分離バラストタンクの要件を満足していない船(PRE-MARPOL船)は同じ基準で評価できないだけでなく、専用バラストタンクをほとんど持っていないので移送自体が現実的でない可能性も高い。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION