移送先のタンクが損傷しているかどうかを液面から判断することも可能であるが、迅速な移送開始のため、上記のような単純な判断が実質上最適であると考えられる。
(3) 移送開始
移送開始を前記の損傷タンクの特定と移送タンクの選定により2次アラーム発生で自動的に行なうようにするか、最終判断を人が行なうようにするかは十分議論した上で基準化する必要がある。
迅速な移送開始を優先すれば自動にするのが望ましいが、検知装置のトラブルによる誤作動の可能性が全くないとは言えない。万一誤作動を起こすとバラストタンクを油で汚してしまうことになり、タンク洗浄等の処理のため運航者に大きな負担を強いることになる。
人が最終判断を下す場合でも、損傷タンクは自動的に特定され移送タンクも自動的に選定されるので、押しボタン一つで移送を開始することは可能である。即ち、事故が起こったことを視覚あるいは衝撃等で判断できる場合は、タンク損傷のアラームが鳴れば迅速に移送開始の判断が下せると考えられる。しかしながら、通常ほとんど起こらない衝突や座礁の事故が前兆なしに突然起こった場合、迅速に移送開始の判断するのは容易ではないと想像できる。
(4) 監視制御設備の基準案
前記の移送開始判断のシナリオを実現するための監視制御設備として、次に挙げるものを装備することを基準案とする。
1) 移送配管を設備した貨物タンクの遠隔液面計
2) 移送配管を設備した貨物タンクの遠隔圧力計
3) 移送配管内の弁の遠隔開閉装置
4) 船橋に装備する上記の監視制御装置
この監視制御装置には、1次アラーム、2次アラームの発生機能、アラームによる損傷タンクの特定機能と移送タンクの選定機能、移送のために開放必要な弁の選択機能、荷役制御装置とアラームのインターロック機能(荷役作業中にアラームが鳴らないこと)およびアラームと弁開放による移送開始のインターロック機能(アラームが鳴らないと弁の開放ができないこと)が必要である。但し、前記のとおり自動移送開始の機能については更なる慎重な検討を要する。
2.5 基準案規則化のための問題点の考察
2.5.1 移送装置の技術的問題
(1) 監視制御装置の信頼性
移送が油流出量低減に効果があることは検証されたが、計算どおりの効果を得るためには迅速に移送を開始できることが条件となる。