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一方、旧ラモス政権は、国軍、共産勢力、イスラム勢力との国民的和解に深慮し、96年9月には和平合意に至った。しかし、エストラーダ政権下は「反政府勢力に屈しない」という方針を掲げ、イスラム勢力との関係は悪化した。ミンダナオ島では数々のテロ事件が発生し、公共市場、フェリー、ラジオ局などさまざまなものが狙われて多くの犠牲者を出した。爆弾テロは2000年5月にはマニラ首都圏でも続発した。イスラム教徒による大規模な誘拐事件も発生し、2000年4月には東マレーシアのシパダン島で外国人観光客21人がら致される事件があった。

難しい政権の舵取りが求められる中、2000年10月、違法賭博上納金着服疑惑に端を発し、エストラーダ大統領への信任が低落。2000年10月12日にアロヨ副大統領が兼任の社会福祉開発相のポストを辞任したのに続き、11月2日にはロハス貿易工業長官も辞任した。また、上下両院の議長など与党連合(LAMP)を離脱する議員が続出、事態は大統領の弾劾裁判にまで発展した。さらに、アロヨ副大統領は、ギンゴナ上院議員(現副大統領)など野党連合を結成し、支持者にエストラーダ大統領追放キャンペーンヘの参加を呼びかけた。2001年1月16日、弾劾裁判での不正蓄財疑惑に関する重要証拠の不開示が決定され、民衆の抗議行動が高まる中、主要閣僚が相次いで離反。エストラーダ大統領は、5月に繰り上げ選挙を実施し、「選挙で選ばれたものに大統領の座を譲る」と演説を行ったが、事態は収拾せず、大統領の即時退陣を要求するデモが数十万規模に膨れ上がった。20日には最高裁長官による「大統領職は空席である」との判断のもと、アロヨ新大統領が誕生した。

 

政体:立憲共和制

議会:

二院制 上院 民選 24議席(6年任期、三選禁止)

下院 民選 250議席以内(3年任期、四選禁止)

主要政党:

「民主フィリピンの戦い(LDP)」

「キリスト教民主主義国民連合(LAKAS-NUCD)」

「民主主義者人民連合(NPC)」

「人民の力(LDP)」

「自由党(LABAN)」

「国民党(NP)」

内閣:アロヨ大統領

大統領は国民の直接選挙によって選出され、任期は6年(再選禁止、副大統領は任期6年、三選禁止)

 

1-3 経済

 

エストラーダ前大統領はアジア通貨危機の最中の1998年に大統領に就任したが、通貨下落の影響により内需向け投資が縮小、外国投資は2000年も減少し、97年以来3年連続下落した。今回の辞任の直接的原因となったエストラーダ前大統領に対する賭博上納金受領疑惑が発覚した2000年10月以降、ペソの下落は強まった。

 

 

 

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