3-3 ロイヤルカリビアン社のABC
1990年代、ロイヤルカリビアン社(RCCL)の環境に対する実績は、あまり芳しいものではなかった。RCCLは1994年のマイアミ及びプエルトリコでの油流失に関連し、1998年6月9百万ドルの罰金を支払っている。さらに、1999年7月海洋汚染の罪で記録的な18百万ドルの罰金を支払ったのは前述のとおりである。罰金を支払っているのはRCCLのみではないが、その都度環境対策に力を入れますとか新造船からは対策は完全ですとか、言い逃れてきた感がある。
しかし、18百万ドルの罰金はRCCLにとっても痛手であり、その後RCCLは元環境庁長官W. K. Reilly氏を環境担当役員に迎え、上級副社長を長とする環境マネージメント運営委員会を設置し汚名の挽回に努めている。
RCCLは1992年以来“Save the Wave”と称する社内環境基本方針を作っていたが、名前だけであまり機能しなかった。上記環境マネージメント運営委員会は、国内外環境諸規則以上に厳しい社内基準(Above and Beyond Compliance: ABC)を作って自社の全クルーズ船に適用することを宣言しているので、その成果が期待されている(付録3参照)。
RCCLの新しい環境基本方針は、下記10項である。
*旗国法、寄港国法及び国際法で定められた海上及び陸上の諸基準を完全に充たすこと。
*諸基準を充たすだけでなく、それ以上の厳しい基準の適用を模索する。
*目的とゴールをはっきりと定めて、常時環境マネージメントと汚染防止策を改善するよう努力する。
*できる限りリサイクル、再使用に努める。全体的に環境に与える影響を考慮の上、効率と質を損なわない範囲でリサイクルされた材料を使った製品を購入する。
*自然の資源、例えば水やエネルギーの利用効率を最大とする。
*設計及び開発プロジェクトの全てに環境ファクターを考える。
*“Save the Wave”あるいは“Ocean Fund”といった社内外のイニシアティブを通じて、海洋環境にうまくなじむ方策を促進する。
*納入業者に環境性能改善を促す。
*乗客に環境問題を分からせるよう対策をとる。
*社の環境保全方針を社会に知らしめる。
RCCLの廃棄物処理基準は、付録3に示すとおりグレー水、ブラック水、ビルジ油水、ホテル及びレストラン廃棄物、特殊廃棄物について法規より厳しいABC基準が適用され、法規どおりの処理はスラッジのみである。RCCL方針とIMO基準(以下括弧内に示す)を比較すると、グレー水は12海里以遠で洋上廃棄(基準なし)、ブラック水はMSD処理、プラスチックその他の屑除去後12海里以遠で洋上廃棄するかあるいは陸上処理(12海里以遠でそのまま洋上廃棄)、ビルジ油水は油分5ppmに処理後12海里以遠で洋上廃棄(15ppmに処理後航行中に洋上廃棄)、スラッジは船上焼却あるいは陸上処理によりリサイクル(陸上廃棄)、ホテル及びレストラン廃棄物は仕分けしてできる限りリサイクルする。