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3-2 クルーズ船業界のCIWMP&P

 

前述のロイヤルカリビアン社(Royal Caribbean Cruise Lines: RCCL)の18百万ドルの罰金支払いは氷山の一角であり、1990年代のクルーズ船業界の環境問題に対する取組みは甘かったといえる。2000年に入り、GAOはUSCGに対しクルーズ船業界の環境監査を強めるよう勧告している。その内容は、USCGがクルーズ船業界、政府機関、環境団体等とクルーズ船のグレー水及びブラック水の排出に関する進歩的基準と検査方法に関する話合いを直ちに開始し、航空機による不法廃棄の監視を強化し、さらに、IMOと充分協力して環境事故が旗国の責任に帰せられる場合は速やかに是正を勧告し、国務省を通じて米国領海以外での環境事故情報を集積すべしというものであった。

 

2000年3月Bluewater Networkと称する53の組織体を背景に持つサンフランシスコの環境団体は、クルーズ船からの排出による環境汚染に関する請願書をEPAに提出した。この請願書は、クルーズ船の排出汚染を規制する現在の法規は抜け道や除外例が多いと主張し、EPAが更に厳しい法規制を整えてより監視の目を強めるべきであると強調している。

これに対し、国際クルーズ船協議会(Internatinal Council of Cruise Lines: ICCL)はEPA、USCG、議会筋に手紙を送り、BluewaterはICCLがクルーズ船業界廃棄物処理要領(Cruise Industry Waste Management Practices and Procedures: CIWMP&P)を作り、新しい技術の開発も含め環境汚染防止に最善の努力を払っている事実を知らないのではないかと反論している(付録2参照)。

 

ICCLは、ワシントンDCに本拠を置く北米17のクルーズ船会社が会員となっている団体である。ICCLは北米クルーズ船業界の90%に相当する95隻のクルーズ船を米国の諸港発で運航し、年間500万人以上の旅客を輸送している。

1999年10月4日、ICCLは廃棄物の洋上廃棄と船上の処理について基準を強化する方針を打ち出し、FCCA(Florida Caribbean Cruise Association)及びNWCA(Northwest Cruise Ship Association)にも働きかけ廃棄物最小化のための手順・方法から環境に与える影響を最小とする進歩した技術開発に至るまでの幅広い基本方針を作成し、全会員がそれ等を実行して環境問題のトラブルを無くすことで合意した。基本方針作成の出発点で、下記諸点が会員間で合意された。

*クルーズ船に適用される法規はもれなく適用すること

*司法当局と協調しながら基本方針を作成すること

*機器の設計の初期から環境に優しい要素を盛り込むこと

*新技術に積極的に取り組むこと

*研ぎ澄まされた戦略と管理により資源を保全すること

*発生する廃棄物を最小とし、再利用及びリサイクルを最大とすること

 

 

 

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