日本財団 図書館


多数の造船所は繁忙を極め、向こう2-3年は船台がふさがっていた。

最終的に、以下の要素を勘案して質の高いイタリアの造船所が選ばれた。

・船価、当然極めて重要なポイントである

・納期

・造船所の評判

・質、これも重要な要素である

韓国の造船所は提示船価が最も低かったが、この種の船舶を建造した経験がなかった。船社は最高の仕上りを絶対条件としていたので、白紙の状態から建造に取り掛かる造船所を考慮に入れるわけには行かなかった。

 

8.2.3 ケース・スタディー3<大型フェリーを運航する会社の場合>

この船社は、地中海で運転手付きのトレーラと旅客の輸送を行っている。そのRoPaxは、既存船、建造予定のもの、いずれもA3型である。同社にとってRoPaxは、オーバーナイトの旅客/乗用車・貨物輸送に従事する大型フェリーという位置づけである。

あらゆる航路で新鋭RoPaxが、陸上の旅客・乗用車の交通、貨物の輸送をうばっていくことになろう。それは要するにRoPaxの方が競争力の高い、優れた輸送手段だからである。

設計上の主要なポイントは以下の通りである。

多数のトレーラと乗用車を迅速に荷役する能力を備えるため、各船は3車線の後部扉と固定船内ランプを装備し、トレーラと乗用車は通常、分離されている。

夜間出港、翌日(翌朝)到着という顧客のニーズからくる高速の要請があるため、同社の航路に投入される新船は最高速力29ノットを有し、夏の観光シーズンのピークには通常20時間の航海時間を15、16時間に短縮できる。なお、速力は、運航スケジュール、市場ニーズ、高速化すれば増大する燃費の各要素を考慮して決定されている。

荒天時の旅客の乗り心地と貨物の安全確保のため、船舶を大型化するとともに、充分な安定化措置を講じている。

船室、プルマン式座席、レストラン、映画館、娯楽室/会議室/劇場スペース、バー、スナック・バー、ディスコ、フィットネス・センター、プールなど、質の高い旅客用設備を完備している。

これらの船の発注に当っては、会長と工務部長が主導する経営首脳部のプロジェクト・チームが中心になって、営業計画や市場ニーズについては営業部長の進言を受けるという形で作業が進められた。概略仕様書を社内で作成し、以前に発注した実績のある造船会社2社から、その概略仕様に基づいた船価見積りを出させた。市場価格については十分把握していたが、この会社ではさらにヨーロッパと極東の造船所2社ずつに、やはり概略仕様に基づいて船価の問い合わせをおこなっている。結果的には、下記の要素を考慮して、欧州の造船所への発注が決まった。

・製品と質は良好で、しかもそのことがわかっていた。

・良好な共同作業の関係がすでに確立していた。

・船主としては建造、艤装、下請業者の選定に影響力を行使することもたやすい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION