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利用者の要求は高まってきている。さらに高速の運航、さらに迅速な乗降や荷役を求めている場合もあれば、さらに高度の質を求めている場合もある。この意味ではトラック運転手も旅客である。バルチック海の「飲み放題クルーズ」などのように、利用者が航海に楽しみも求めている場合には、所用時間は旅客にとってあまり重要な要素でないが、貨物にとってはやはり重要である。

トレーラ輸送には、RoRoやRoPaxの設計を左右する重要な差違がある。それはセミトレーラが運転手と牽引車を伴って輸送される場合と、それを伴わないトレーラ単独の輸拳との差違である。無人トレーラ単独の輸送は、船上で占めるスペースがそれだけ少なく、また重い牽引車の重量もかからず、さらに海上輸送中の運転手の賃金も払わなくて済むので、トレーラ運行者にとってはそれだけ安上がりな方法である。しかし港内の荷役ではトレーラの揚陸に、運転手自身が運転するのでなく港湾荷役業者の作業を必要とするので、それだけ費用がかさむ。したがって有人トレーラは短距離航路で、無人トレーラ方式は長距離航路で多用される。

運転手と牽引車付きの場合、設計の相違点は大半が運転手向け設備にあり、この設備のためにトレーラ単独用の貨物フェリーより建造価格が高くなる。また必要とされる貨物スペースもトレーラ単独の場合よりも広くなる。

RoPaxを配船する航路は、輸送量が多く、年間を通じて稼働率を維持できなければならない。夏場の旅客需要増には、高性能の高速フェリーを補完的に投入することで対処する。これらの高速フェリーは冬場には南米や南欧の航路にシフトする。これまで在来船を運航してきた貨物オペレーターは、超大型RoPax(最新のものは車線長4000m)を投入すれば、市場のニーズに経済的に対応できるとともに、付加的な旅客運賃収入も得られることを理解している。

競争の条件として所要時間短縮と旅客設備の高度化が要求される傾向は、中長距離の航路において最も著しい。高速により船舶の稼働率を高められるためである。輸送量、運航スケジュール、港間の距離の各要素間の関係は船速と船型を決定する基本的要素で、したがって所要時間短縮の要件に対しては、航路によって決まる可能性を考慮して対処しなければならない。例えば中長距離の所要船速を決定する場合、275海里未満の航海距離であれば24時間に1往復を、600海里未満であれば48時間に1往復を行えるよう決定される。

船舶運航事業者はどこでも、利用者のこまごまとした要求に制約されていて、運航船舶の設計、投入航路、運航スケジュールなど、すべてその要求に対応して決定しなければならないが、その一方で運航船隊全体の稼働率の極大化も図らなければならない。多数の航路では、夜間の出港と翌朝の到着が好まれる。すなわち例えばジェノバ/シチリア航路でいえば、その425海里の距離は29ノットの船舶を必要とすることになる。こうすることで20時間の所要時間を17時間に短縮し、夏の観光の最盛期には15ないし16時間に短縮することも可能になる。このように運航時間を設定すれば、工場や倉庫のゲートに貨物を翌日配送すること、あるいは旅客がシチリアや北イタリアの自宅なりホテルなりに、ディナー・タイムまでに到着することが可能である。

 

 

 

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