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ユーロトンネルは海峡横断旅客輸送に甚大な影響を及ぼし、海上輸送は旅客、貨物とも現在減少を示している。背景となる英国航路全体の輸送の伸びはきわめて堅調で、フェリー輸送量のみの5%を上回る10%近い伸びとなっている。トンネルは受入れ能力の制約があるので、さらに輸送量が伸びれば(少なくとも貨物に関する限り)増加分はフェリーが積み取ることになるであろう。

 

スカンジナビア/バルチック海航路:

旅客・乗用車輸送の60%前後を占めるスカンジナビア・バルチック海で最大の航路は、エーレスンド橋という脅威を有する短距離のスウェーデン/デンマーク航路と、トレーラの主要航路であるスウェーデン/デンマーク・ドイツ航路である。輸送量が比較的低いバルチック東部では、英国航路に比べ、貨物が大きな比重を占めている。

旅客輸送量は一部の航路では微減、他の航路では微増を示している。貨物輸送は大抵の航路で5ないし10%の率で増加している。

 

地中海航路:

地中海には11のフェリー航路があり、英国、スカンジナビア・バルチック海、いずれの航路と比較しても集中度が低い。しかしながら旅客、貨物いずれでも主要航路はイタリア、サルディニア、コルシカを結ぶ航路で、乗用車の35%、旅客の4分の1を占めている。

貨物・乗用車/旅客とのバランスについていえば、地中海航路は英国航路とスカンジナビア・バルチック海航路との中間にある。ギリシャ関係航路はトレーラの比重が大きいが、最大の貨物輸送航路はシチリア/北イタリア間である。

主要な島嶼間航路では成長が停滞しているが、中小航路の大半は著しい急成長を示している。例えばイタリア/アルバニア航路は旅客70%、貨物50%の伸びが見られる。

イタリア/ギリシャ航路は地中海航路の中で最も急速な発展を示し、最も興味深い航路である。

1990年代に建造された新鋭RoPax10隻と貨物積載量の大きい旧型船6隻が就航している。

 

1.2.3 輸送対象構成の変化と他の船種や輸送形態との競合

RoPaxで輸送する貨物/旅客/乗用車の比率をどう選ぶかはきわめて複雑な問題で、航路のいずれかの端における旅客・貨物輸送需要のみで決まるものではなく、他の船種や他の輸送形態との競争も関わってくる。季節性の間題へのオペレーターの対処が決定的に重要である。大抵の航路では旅客は観光客であり、季節的変動が大きいからである。これに対応するために、RoPaxフェリーと組み合わせて高速フェリーで夏場の需要増に対処するという手法が採用される。

RoPaxに対する競争はさまざまな形態で生じる。貨物は在来型のRoRo船が輸送したり、あるいは水上を横断する必要がなければ鉄道やトラックが陸路で運ぶ。旅客は空路、鉄道、道路交通によっても輸送されるが、最も重要な競合相手は旅客専用フェリーである。

船舶の選択とその詳細設計は、旅客と貨物の比率により決まる。貨物車は大型で、乗用車よりはるかに広いスペースを必要とする。短距離の、日中で終わる横断航海であれば、トラックの運転手にとっても乗用車の搭乗者にとっても船室は必須の設備ではない。さらに短距離であれば、娯楽や特に高い質の設備を提供する必要もなく利用者の主な関心は迅速に乗り降りすることにあり、したがって小型船が好まれる。一方、中距離の航海では、レストラン、バー、映画、質の高い設備がきわめて重要になってくる。

 

 

 

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