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おわりに

 

ジョーンズ・アクトに代表される米国の内航保護制度については、近い将来これが廃止されたり緩和される可能性は極めて低い、というのが結論である。一時期、ジョーンズ・アクト改革同盟が結成され、改革の気運が高まったが擁護派の勢力は圧倒的に強力であり、ジョーンズ・アクト改革の見込みはほとんどないということを認めた同盟側は、匙を投げ、同盟も瓦解してしまった。

ブッシュ共和党政権が発足するとはいえ、政権の発足経緯や議会の構成を考えると、これまでの政策が大きく転換される可能性は極めて低い。また、海事問題は政権や議会で優先的に解決されなければならない問題ではないので、ジョーンズ・アクトに代表される内航保護制度の議論が近日中に再燃することは、まずないと思われる。また、共和党政権といえども、ブッシュ新政権はレーガン政権のように海軍の軍備拡張、特に艦艇の大量建造には否定的であり、ジョーンズ・アクト船は米国造船業にとって重要な市場であり続けるであろう。

しかし、自発的にではないにせよ、ジョーンズ・アクト、特に米国内建造要件が俎上に登る可能性がなくはない。例えばWTOの交渉やOPA90に合致する油槽船代替建造が進まない場合等が考えられる。従って、米国の内航船の船腹構成や内航船市場の動向、政権や議会等の動向には今後とも注意を払う必要がある。

もっとも、今後予測可能な限り、ジョーンズ・アクトに代表される米国の内航保護制度に大幅な改革があるとは考えられない。現在の内航船米国内建造要件は今後も存続し、米国造船業界は、限られてはいるが極めて高船価の商船を受注し、適当な利益を確保すると思われる。

 

 

 

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