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クォーテル氏は、ジョーンズ・アクト航路に従事する船舶が不足しているのは主に米国建造要件が原因であると指摘している。米国における建造コストは同等船舶の世界平均と比べ数倍となっており、米国籍運航者の船腹量拡大の足を引っ張っていると同氏は主張している。船腹量不足のために、航路の数が限られ、高運賃につながる。その結果、バルク商品の荷主は高い船賃を払いたがらず、鉄道を利用することになる。

クオーテル氏の主張は、商品出荷を鉄道に依存している事業者の立場を代表するマッケイン上院議員等内陸州選出議員の関心を引くものと考えられている。米国の鉄道システムは、合併のために荷主の選択肢がさらに狭まっており、また米国中でさまざまなボトルネックが生じているためである。さらに、クオーテル氏はジャーナル・オブ・コマース紙に対して「石油メジャーがついに関心を示した」と述べている(6/24/98)。

ジョーンズ・アクト支持派であるクローリー・アメリカン・トランスポート社のマイケル・ロバーツ政府関係担当ディレクターは、反対派が白旗を揚げたものと新提案を解釈している。ジョーンズ・アクトの船舶建造要件に焦点を絞ることにより、ジョーンズ・アクトの廃止を諦めたのだと同氏は主張した。

一方、クローリー社のエリオット・バーンサイド社長は同提案を警戒している。「堤防に穴が一つ開けば、堤防がないのと同様だ。」と同社長は述べた(ジャーナル・オブ・コマース紙、6/24/98)。ジョーンズ・アクトの重要な条項の一つを廃止するよう同法を修正することにより、内航制度の他の柱も存在を脅かされることになりかねない。」と同氏は主張している。

当然、米国造船業界はこの提案に反対するだろう。1998年6月15日付けのシップヤード・クロニクルは、「SCAは、ジョーンズ・アクトを強力に支持し、その米国建造要件を廃止しようとするいかなる試みに対しても激しく反対するつもりだ。」としている。

米国のメジャー系石油会社であるシェブロンが、ジョーンズ・アクト改革同盟の提案を支持する声明書簡を1998年7月23日付けで関係者に送った。

シェブロンは今般の書簡の中で、ジョーンズ・アクト内航保護全体を廃止する動きを支持するつもりはないが、6月の改革同盟の新提案は、米国籍要件及び米国人配乗要件を維持しつつ米国建造要件のみを変更しようとするものであり、これまでの提案とは大きく異なると考えており、同社としてはこの動きを支持する旨を表明している。

 

 

 

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