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1. ジョーンズ・アクト制度の基本的構造

 

a) ジョーンズ・アクト

カボタージュ(Cabotage)という用語は、内航海運のすべて、または一部を、自国籍、自国法人または個人所有、自国建造または修理、または自国船員を配乗した船舶に留保することにより、国内海運産業を保護、育成するために講じられる政府の措置を指す。米国は歴史的に、内航輸送を米国籍船に制限することにより、国防上、経済上の目的で自国商船の発展を奨励してきた。第一回米国議会の際に、先ず議会は州政府が米国船舶に過重な関税を課することを禁じ、国内海運の促進を図ったのである。その後2年間は、内航運航に従事する外国籍外国建造船に対して重い関税をかけることで後押しした。

米国で成立した最初の大型カボタージュ法は、1817年3月1日法(Act of March 1, 1817, Ch.31, 3 Stat. 351(1933年に廃止))である。同法により、米国に商品を輸入する船舶は米国籍とし、商品の輸出国が同国への輸入商品を輸送する船舶に同じ条件(自国籍)を課している場合は、米国人所有であることが義務づけられた。さらに、内航に従事する船舶も、同様に米国籍、米国人所有が義務づけられた。同法を原型として、長年にわたってその政策が拡大、延長された結果、現行のカボタージュ規制となった。

内航商船を奨励する国策は、米国の最も重要なカボタージュ法である1920年商船法(公法66-261、41 Stat. 998(1920))の冒頭に簡潔に表明されている。同法は、提案者であるワシントン州のウェスレー・L・ジョーンズ上院議員の名前をとって、一般にジョーンズ・アクトと呼ばれている。ジョーンズ・アクトは内航保護制度の設立の根拠の一つとして次のように記している。

国防及び米国内外通商が適切な発展を遂げるためには、米国の通商貨物の大半を輸送するのに十分であり、かつ戦争または国家危機の際に海軍補助、軍事補助の任務を果たす事のできる、最も装備の整った、最も適切な種類の船舶により構成される商船隊が米国の民間人により所有、運航されるように取り計らう必要がある。

 

 

 

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