日本財団 図書館


第2部

最近の「米国建造」要件の動向

 

ジョーンズ・アクトとして一般に知られている1920年商船法セクション27は、米国内航制度の代名詞となっている。米国内航法は米国海上輸送産業保護の一部を成している。助成、米国所有要件、米国籍要件、国内建造要件にもかかわらず、米国籍商船及び内航海運は今世紀を通じて衰退の一途を辿ってきた。これらの政府による産業介入は、軍事目的で商船の育成と支援を図ったものであったが、民間海運産業を繁栄させるという目的は達成できなかった。実際のところ、沿岸航洋輸送はこの期間にほとんど発生しておらず、米国海運の支援を目的としたこの産業政策は明らかな失敗に終わったとする向きも多い。一方で、ジョーンズ・アクト制度支持派はこの手の議論に真っ向から反対している。内航保護がなければ米国籍商船隊はとうの昔に消滅しており、それを再建する能力も一緒に失われているだろうというのが彼らの言い分である。内航保護政策を生き残るための頼みの綱としている造船所と船員は、ジョーンズ・アクトがなければ今ごろ廃業しているはずだというのである。ジョーンズ・アクトを巡る立法活動の経緯はこれらの中核的要素を反映したものとなっている。これらの要素に対する認識の変化に従って、内航保護制度の支持と批判は相互に発生することになる。

最初に、内航保護制度廃止の先鋒であった運動が失敗に終わったことを指摘しておく必要があろう。1990年代の半ばに内航保護制度撤廃の看板を掲げて結成されたジョーンズ・アクト改革同盟が、現在は死に体であることは周知の事実である。法案は議会に提出されているが、改革運動がかつての勢いを失っているという点でアナリストの意見は一致している。同盟は事実上解散しており、現在の焦点は、内航輸送の拡大により市場における解決策を模索する方向に移っている。

第2部では、ジョーンズ・アクト制度の基本的な仕組みを概説する。広い意味でのジョーンズ・アクト(内航保護)制度としては、クルーズ船、曳航船、浚渫船の米国建造、米国籍、米国人配乗要件も含んでいる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION