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5. 米国造船所の建造能力

 

1990年代に建造施設のダウンサイズが行われたことと、米国海軍艦艇建造契約の受注が継続していることが相俟って、高価格小数の内航商船契約は、米国の大型造船所の大部分にとって、安泰な事業基盤を提供している。

6大造船所(アボンデール、バス・アイアン、ジェネラル・ダイナミクス、インガルス、Nassco、ニューポートニューズ)はすべて冷戦の終結後の海軍艦艇建造工事量の減少に適応してきた。1980年代には年間30隻であった艦艇建造契約は現在では年間6隻から8隻になっており、この新たな市況に合わせて、6社すべてが人員削減を行っている。ニューポートニューズとジェネラル・ダイナミクス/エレクトリックボートは今後10年間を通して継続するプログラムで潜水艦を建造中である。ニューポートニューズはまた、空母一隻の建造と、別の空母一隻の大型オーバーホール工事を行っている。加えて、同造船所はプロダクトタンカー建造契約の成果が芳しくなかった結果、商船建造市場から完全に足を洗っている。バス・アイアン造船とインガルスは駆逐艦、揚陸艦を建造中であり、当該プログラムは今後10年間にわたって継続することになっている。インガルスはまた、ハワイ航路向けに2隻のクルーズ船を建造中である。アボンデールとNasscoはシーリフト船を建造中であり、どちらも海軍向け弾薬船シリーズの大型建造契約を狙っている。また、これらの造船所は現在商船工事も手掛けている。アボンデールはアラスカ航路向け原油タンカー3隻を建造中であり、インガルスはクルーズ船2隻、NasscoはRO/RO船2隻を建造中である。

この他に大型船建造能力を有する造船所が2社存在するが、これらの2社の置かれている状況は安泰とは言い難い。準大手のアラバマ造船所の手持工事量は非常に少なく、同造船所の建造能力のごく一部しか稼動していない。同造船所は数年前にケミカル/プロダクトタンカー2隻を建造した際に、商船建造事業参入ではかなりな痛手を負っている。同社はこの契約で巨額の赤字を出した。アラバマ造船所は現在、内航シャトルタンカー市場を積極的に狙っており、一体型タグバージを開発し、シャトルタンカー向けに売り込んでいる。

 

 

 

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