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NAFTAは米国の主導の下に成立したものであるが、米国はさらに2005年を目途に中南米を囲い込んだ34ヶ国参加のFTAAを成立させようとしている。いずれにせよ荷主の世界すなわち世界経済圏はこのところ大きく変わっており、キャリアとの関係も近代化せざるを得なくなっている

 

キャリアの世界は自由貿易圏の進行と併行してM&A時代に突入している。しかしM&Aが海運業の持つ全ての問題を解決するものでないことは誰れもが理解している。

現在進行中の自由貿易圏の結成は荷主の世界そのものではない。NAFTAでは経済統合と自由貿易の推進という目的以外に、北米三国の労働条件の均一化と環境整備のための投資が広範に行われ、FTAAでは同じく経済統合と自由貿易の推進の他圏内の教育環境の整備、民主化と人権の確立、貧困と差別の撲滅が具体的に討論されている。

 

荷主も単に貨物を大量に集めてキャリアから安いレートと好サービスを引き出すだけでなく、世界各国の抱える問題点をよく理解し、かつては一心同体であったキャリアと話し合って、共存共栄の道を探すべきだというOSRAの精神はもっともである。しかし現在の米国の問題点は社会構造自体が貨物を輸送する国際海運業に適さなくなっていることであり、自由貿易圏の創設といったレベルでは主導権を発揮しても、キャリアのことは当分成り行き任せという態度である。

いずれにせよ海運業のM&Aは現在進行中であり一方OSRAも着々と根を下ろしつつあるが、海運界に真の近代的慣行を確立するためには一層の努力が必要と思われる。

 

 

 

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