5-3 国税規則サブパートF
「2-2 船腹構成の現状」で述べたように米国船主外国籍船の数はこのところ急激に減っている。
米国海運業界の首脳は国税規則が改正されなければこの分野の将来に望みはなく、米国船主は外国籍船の運航事業をやめるか、外国海運会社に買収されるかのいずれかを選ばなければならないだろうといっている。国税規則改正を主張する急先鋒の一人、フロリダ州リバー・ビーチに本拠を置きカリブ海航路コンテナ船を運航するトロピカル・シッピングのMurrell社長は1975年以降の国税規則の改悪が米国の貨物輸送をほとんど外国船主がコントロールする外国籍船に奪われる原因となったと言っている。
船舶の運航収入に対する課税は国税規則サブパートFにより1975年以前は全額免除され、1975年から86年までは船舶に再投資される分だけは免除されていたが、1986年以降は何の免除もない。本改正には立法者に二つの誤算があった。一つは本改正により外国籍船を運航する米国船主が外国籍にしても税金を取られるならば米国籍に戻そうとするだろうと考えたことである。その結果米国籍船が増え米国市民の船員の雇用が増えるとのシナリオであった。
他の誤算は税金がそれなりに増え国家財政を潤すだろうと考えたことである。しかし結果は二つ共外れている。前述したように米国船主外国籍船は1975年には739隻であったものが1997年には357隻となり、1975年に2億6,000万ドルあった税収入は1996年には5,000万ドルに激減している。加えて本改正により米国市民船員は1人も増加していない。
1975年の改正の間違いに気付き、1975年以前の状態に戻そうとする動きは1997年以来活発である。1997年10月下院歳出委員会委員のE.C.ショウ議員は本件に関する国税規則の改正を求めた法案H.R.2684を提出したが、可決されるに至らなかった。しかし議会の指導陣に本件の重要性を教育したことの効果は大きい。
H.R.2684は国税規則に下記改正を盛り込み、課税する対象収入から海運関係の収入を除外することを求めている。すなわち外国をベースとする企業の収入にはバハマ、ホンジュラス、リベリア、パナマ、マーシャル諸島及び運輸長官が認める国に登録された船舶の運航に基く収入を含まない。
ただし本件にかかわる船主、運航者、或いはコントロール会社の代表は相応の米国籍船隊を年間320日間所有或いは運航する旨を記した契約を運輸長官と交わさなければならないという条件付きである。