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同法が連邦議会で討議されている時点での港湾当局の最大の関心事は同法によりキャリアのM&Aが進み、港への寄港回数が減り収益が激減するのではないかということであったが、M&Aは海運改革以前に始まり、皮肉にもこの危惧は的外れになった。

 

海運改革法を議会で通過させるための妥協として、キャリアに反トラスト免責が与えられたが、荷主達はキャリアが反トラスト免責を行使してカルテル行為に走らないかを監視している。

米国以外の多くの国は反トラスト法がないので、海運改革法の反トラスト免責がないと米国のキャリアのみが競争相手と話し合うことが出来なくなり、問題である。荷主がレートについて有利な条件を引き出すには荷主が合同して貨物のボリューム効果を引き出せるようにすることが必要であると同時に、キャリア側もある航路では固定客に限定するとか、他の航路では自由にキャリア同士で談合するといった柔軟な対応が必要となっている。

 

集貨ブローカーは蚊帳の外に置かれた海運改革法での取り扱いに怒りを表明していたが、下院司法委員会のヘンリー・ハイド下院議員はブローカーの立場に立って、海運改革法でキャリアに与えられた反トラスト免責を取り上げる法案を用意している。本案が大統領選の行われている本年中に成立することはないが、支持者達は来年も提出すると息まいている。

 

従来の荷主連合及び新しい中小の荷主連合のメンバーがお互いに協力し合って海運改革を成功に導くことが望ましい。従来も税関に関する事項で荷主が共同研究した事例はあるが、この関係が海運の経済環境やレートの設定の問題にまで及ぶことが望ましい。

荷主連合の役割は単に大量の貨物を集めて船を満船にするだけでなくキャリアの求める最高のリターンを得られる柔軟な術策をキャリアと共に考えられるものでなければならない。いずれにせよ今後のキャリアと荷主の交渉は時間のかかるものになるであろう。

 

中小の荷主も荷主連合に参加することによってインターネットやロジスチックス・マネージメントを使ったサービスを受けられるようになる。また、ある航路では輸入業者と輸出業者が協力して往復の荷を保証するサービスも可能となる。さらにいろいろな航路にまたがった荷の保証といったことも今後は荷主連合の重要な役目の一つとなるだろう。

キャリアは現在M&Aで頭がいっぱいの状況であり、M&Aが一段落した後でないと荷主連合との複雑な交渉をこなす態勢にならないかもしれない。いずれにせよ海運改革法が完全に機能するには未だ若干の時間がかかりそうである。

 

 

 

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