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ASAがジョーンズ・アクト船で建造するのは沿岸・非隣接航路の大型船である。しかし米国造船所の船価は高く、米国建造が絶対要件にもかかわらず船主は中々船を発注せず船齢は長くなるばかりであった。通常国際航路大型船の寿命は25年であるが、ジョーンズ・アクト船では35年が普通となっている。ジョーンズ・アクト船の新造船をためらっている米国船主も最近やっと新船建造の動きを見せはじめている。1999年12月の初め、Totem Ocean Trailer Express(米本土―アラスカ航路)は2隻のRO/RO船を3億ドルで発注することを決定した。

Santa Maria Shipowing and Tradingは米本土―ハワイ航路用に2隻の700TEUコンテナ船の建造をほのめかし、またTrailer Bridgeは米本土―プエルトリコ航路に新造タグ/バージを投入することを表明している。

 

1990年油濁防止法は2015年迄のシングルハル・タンカーの段階的廃止を義務づけている。ジョーンズ・アクト船の廃止スケジュールは1998-2003年38隻、2004-08年27隻、2009-15年18隻、合計83隻6,533,911DWTとなり、むしろ米国造船所の対応能力が問題となっているが短期的なものである。

1993年造船振興法によるタイトルXIの状況は前述の通りであるが、現在40ノット超高速コンテナ船FastShip4隻、トーテムのRO/RO船2隻、Sea America Venture向けのクルーズ船3隻を含む26億ドル以上の申請が近々提出される予定である。

 

1999年米国クルーズ船観光振興法は共和党大統領候補指名戦を戦った上院通商科学運輸委員会の委員長であるマッケイン上院議員により提出されたもので、外国クルーズ船の米国港間の寄港を許し、米国籍クルーズ船、クルーズ船の米国内建造に対するインセンティブを含んでいるが、何隻のクルーズ船建造に繋がるかは不明である。国税規則改正でASAが関心を持っているのは資本建造基金(CCF)の適用範囲が国内沿岸航路船にまで拡大されようとしている点である。後述の国税規則サブパートFの改正は外国建造船が対象となるのでASAは関心を示していない。

 

ASAが最も力を入れているのはNDF向け大型予算の獲得である。NDFは国家非常時には軍用として利用することができ、平和時には国際航路商船として利用可能な商船を建造するプログラムであることはすでに述べたが、余程設計を研究しないと商船のレート競争についていけない可能性があり、今後設計を注目する必要がある。

現在NDFの対象として検討されているものに日米航路の車両運搬/冷蔵船があるが、日本の業界の反対でNDFの適用は難しい状況である。また前述の40ノット超高速コンテナ船FastShipも軍事的要素を設計に盛り込むのでNDFを適用して欲しいと申し出ているが実現は未知数である。

 

 

 

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