合併後は117隻となったが、そのうち76隻はコンテナ船である。合併前のAPLの所有船27隻のうち9隻はMSPを受けるために米国の便宜オペレーター会社ASMに移されたが、9隻とも全て外国建造船である。国際航路で米国建造船を使っても採算に合わないため、APLの合併前の27隻もPresident Jefferson以外は全て外国建造船であり米国建造船の影は薄い。シーランドは合併前81隻、279,300TEUコンテナ船隊を運航していたが、付録1によればシーランドの米国籍35隻のうち米国建造船は13隻に過ぎない。
シーランドのMSP船は15隻であるが全て外国建造船である。ライクスの場合も事情は同様でCPと合併後の12隻のコンテナ船隊のうち5隻(FOBC3隻、FABC2隻)がMSPを受けているが全て外国建造船である。
以上のように外国の強大な海運会社が瀕死の米国の海運会社を買収し、MSP助成を得るために米国籍便宜オペレーター会社を作って優秀な外国籍船を米国籍に転籍しているがそれらは全て外国建造船である。このことについては、MarAdも米国商船隊の強化或いはMSPの効果として喜んでいるふしがある。
付録1の時点(1999年4月1日)で13隻の米国建造船を持っていたシーランドもそれら13隻の船齢はレーガン政権時代以前の船齢20-38年の老齢船であり、到底厳しい競争に勝ち抜ける代物ではなく、船名録から消えていく日も近い。つまり米国外航商船隊は全て外国建造船に頼っており、米国造船所から見れば海運業のM&Aは一切米国造船所の建造隻数の増加と関係がないことになる。
したがって海運業のM&Aは米国造船業に関係がないと結論することができる。このことは最近のASAの建造隻数増加対策の中でも一切コメントされていないことからも裏付けられる。
現在までの法制でASAが建造量増大に繋がるものとして今後も期待しているものはジョーンズ・アクト、1990年油濁防止法、1993年造船振興法、1999年米国クルーズ船観光振興法(US. Cruise Ship Tourism Development Act of 1999)等であり、またDDG51に適用されたMYPが14億ドル節約となり、建造隻数の増加に繋がると評価している。
ASAが今後建造量増大のためにロビー活動を強めるものとして、前述のタイトルXIへの年額5,000万ドルの予算獲得、国税規則の改正、前節で述べたNDF、1998年から99年にかけて議論されたリースファイナンスによる補助艦の建造等がある。