4-4 造船業に与える影響
現在米国造船業は大恐慌の1932年以来最低の建造隻数である。艦艇の発注量は年平均5-6隻に過ぎず、増加傾向にある軍事費もなかなか艦艇にまで廻ってこない現実である。
大型外航商船の建造も1994年以来15隻に過ぎない。アボンデール、バス・アイアン・ワークス、エレクトリック・ボート、インガルス、ニューポートニューズ、NASSCOの6大造船所を会員とする米国造船所協会(ASA)の会員会社は平均従業員を33%削減し、設計、建造、管理の全ての分野において合理化のための改編をせまられている。
いずれにせよ、米国造船業は建造隻数の確保が緊急の課題であるが、ASAを取り巻く環境は悲観的である。
米国造船所は他の造船国に比して全体コストで2倍以上、資材費、建造費何れも高く、資材費のみで海外造船国の全体コストを上回る現状であり建造数の確保は艦艇建造量の増大、米国造船所建造を義務づける諸法制に頼らざるをえない。
米国の国家安全保障維持のための目安とされる艦艇300隻体制のため必要とされる年間10隻の発注が、現在の平均5-6隻以上に増大しそうもない実情については4-1節で述べた通りである。米国建造を義務づける、または奨励する諸法制としては従来よりタイトルXI建造融資保証やジョーンズ・アクトがある。問題は従来これらの法制が適用されていたにもかかわらず、大型外航商船の建造隻数が非常に少ないことであり、さらにこれら両法とも今後建造隻数の長期間にわたる抜本的増大に繋がりにくいことである。
タイトルXI建造融資保証は近年議会から何度も予算をカットされている。2000会計年度にはわずか600万ドルが配算されただけで、1994会計年度水準の85%減である。理由はタイトルXIの項目に手付かずの6,250万ドルが残っているということであるが、今後タイトルXIの予算が付かないと多くの新船建造が流れる可能性があり、ASAは少なくとも1年間5,000万ドルの予算を付けるようロビー活動中である。
上記造船業の状況下での海運業のM&Aは当然ASAの関心を引いているが、建造隻数の増大に繋がることはないので表立ったコメントは出されていない。APLの場合、合併前は27隻、196,200TEUのコンテナ船隊を有していた。