3-4 今後の動向
今後10年間世界のライナー業界のM&Aは今迄と同じペースで進むものと予想されている。
需要と供給のバランスが回復する兆しはなく、運賃の下降傾向は止まらないであろう。運営改善のための大投資ができない状況は当分続くものと思われる。
現在の貿易不均衡は構造的なものであり将来ともある程度の空コンテナ率を見込んだ採算計画を立てる必要がある。船腹過剰といっても航路によっては今後5年位投資の必要な航路があり、この投資をいかに実行するかでライナー会社の格付けも異なってくる。
今後の投資は国際航路コンテナ船のみならずフィーダー船、効率の良いターミナル、インターモーダル設備、電子データ処理(Electric Deta Interchange: EDI)等多額の資金を要するものばかりである。
上記のような状況で、各ライナー会社の業績は今後数年間は低迷すると予想され、M&A或いはアライアンスの進行は間違いないと思われる。強者のみしか投資に耐えられず合理化も進められない現状は、急速に業界勢力図が変わっていくことを示している。M&Aの度に、今まで大資本が見向きもしなかった非主要航路で運航していたローカル、高運賃、弱小の独立オペレーターは大資本の下に統合されるようになり、さらに合併後、他の独立オペレーターの運航する非主要航路を安いレートを武器にして圧迫し、次々と大資本に統合する。
主要航路ではサービスの質が今後多様化してくるであろう。海運会社によるドア・ツー・ドアのサービス等を主張する人もいるが、とりあえずコンテナ船の大型化による中核コンテナ・ターミナル(ハブ)からフィーダー船に移し替えて各地に転送するシステムが一般化されるかもしれない。
そうなるとますます投資額は増大し、大海運会社のみしか対応が出来なくなる。しかも、運賃の公開に関する規則が改正され、公開すべき内容が個々の海上運賃から、包括的な輸送サービスへと変更されたため、運賃自体の透明性が低くなった環境で、これらの動きに対応しなければならないので問題は複雑である。(海運改革法については、巻末の注釈1参照)
ハブの問題は今後ライナー業界を大きく変えていくものと思われる。ハブ港へ名乗りを上げている港湾が次第に増えてきているが、業界のハブ港に対する見方は立場によってかなり異なっている。ハブ港になれば外航大型コンテナ船からコンテナを陸揚げし再度フィーダー船に積み込むハブ港積み替え(Hub Transshipment: HTS)により、港湾当局の収入は2倍に増大する。