3-2 米国海運業M&A具体例―国際航路
前節で米国のライナー会社が1990年代後半のグローバリゼーションの波に巻き込まれる過程を見てきたが、米国の場合ライナーの筆頭会社であるシーランド社から始まって第2番目の大手名門のAPL、第3番目のクローリー・マリタイム社、第4番目のライクス・ブラザーズ社が全て企業の一部或いは全部を外国の海運会社に買収されるという前代未聞の事態となっている。
以下、話題性の大きかった順、すなわちシーランド、APL、ライクス、クローリーの順に米国海運業のM&Aの具体例を示す。
シーランド―マースク
1999年3月シーランドの親会社で東部最大の貨物鉄道会社CSXのスノウ会長はCSX1のコンテナ船部門の子会社であるシーランド・サービシズ社(Sealand Services, Inc.)を再構築するために国際コンテナ海運部門、国際ターミナル・オペレーション部門、国内コンテナ海運部門に3分割すると発表した。
シーランドが外国の海運会社に身売りするという噂はこれをさかのぼる2年ほど前から海運関係者の間で囁かれており、CSXの発表がM&Aの準備であることは誰の目からも明らかであった。
分割前のシーランドは84隻のコンテナ船隊を世界80ヶ国、120の港に配船し1998年の総収入は39億ドル、営業利益は1億3,300万ドルであった。3分割後、CSX国内コンテナ部門に16隻が移され、米国本土とアラスカ、ハワイ、プエルトリコ等を結ぶ航路に継続従事し、国際ターミナル・オペレーション部門には米国、アジア、ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ及びオーストラリアの26のターミナル、付属修理設備、倉庫等が移管された。
1999年7月、A.P.モーラー―マースク社が8億ドルで上記3分割されたうちの国際コンテナ部門を買収すると発表した。この合併によりシーランド社の国際コンテナ部門のクランシー社長は新会社、マースク―シーランドの会長となり、マースクのトムソン社長は新会社の社長兼CEOに就任した。
1 総合運輸会社CSX Corporationは1987年にSea-Land Services, Inc.を買収した。1999年に同社の国際コンテナ部門をAPモーラー―マースクに売却した後、国内コンテナ部門はCSX Linesとしてサービスを提供している。CSX Linesはまた、アンカレッジ、コディアック、ダッチハーバー(アラスカ州)、ホノルル(ハワイ州)、サンホワン(プエルトリコ)、アプラ(グアム)で内航ターミナルを運営している。CSXはCSX Linesの他に、CSX Transportation Inc.(鉄道)、CSX Intermodal Inc.(インターモーダルサービス)、CSX World Terminals(国際ターミナル運営)、Customized Transportation Inc.(ロジスティクスサービス)等を子会社として抱えている。