1990年初頭に冷戦構造が終結するまではソ連圏と対決する第三次世界大戦を想定した準戦時体制下軍需物資を輸送したり、自由主義諸国に援助物資を輸送する米国商船隊は不可欠であった。しかし人々の目は大商船隊よりは大海軍の維持に向けられ米国商船隊の維持策は必ずしも当を得たものではなかった。
1990年以降米国は世界唯一の強大軍備保有国となり米海軍は世界中の公海を何等の妨害も受けずに航行できるようになったが米国海運界は経営的に厳しい時代に突入した。政府が国家安全保障上の目的で用意した種々の海運助成策もあまり役立たないほどに環境が悪化している。1990年代の10年で世界経済はグローバリゼーションと一層の技術革新の時代に入り、それに加えて海運業は後進国の参入が比較的に易しく、競争が激化し、レートは益々下がり、運航費が割高の米国商船隊の維持が難しくなっている。コンテナ船元祖の米国商船隊も1990年以降外国商船会社に身売りせざるをえない状況になっている。