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6. おわりに

 

以上、軍事技術の舶用工業への転化に関し多角的に考察してきたが、個々の舶用機器の転化について一つ一つ追跡調査することは不可能であり、また、あまり意味もないので最小の記述に止めた。

人々の一般的感触として冷戦構造終結後軍事技術が開放されてメイド・イン・アメリカの地位向上に役立っていると感じているが、このことは軍事技術の中核であるDOS管理のUSMLの変更による転化よりも、本報告書で述べた軍民両用品目を対象とした技術開発プロジェクトの推進(第3章)、多国間輸出規制の緩和(第4章)、軍事技術予算で開発された軍民両用技術の転化(第5章)に基づく実感であり、USMLの改革はむしろ今後の問題であろう。

 

軍事技術の内容は時代とその時々の政権により大きく左右されるが、一度軍事技術であるという烙印を押されるとその格付けの変更は容易ではない。冷戦構造終了後の10年に発生した多くの地域紛争は過去の軍事技術で処理されてきた。しかし、2000年を迎えた今日の世界情勢を考えると、過去の陸・海・空軍編成はあまり意味がないといえよう。

米国においても、ようやく今後50年間の軍編成と軍事技術のあり方に関する研究成果が発表され、それ等が徐々に取り入れられつつある。

本質的に、軍備を保有することの目的が、国家間の対決の解決から世界的に同時に多発する地域的脅威の除去に移ってきているといえる。クリントン米大統領が、2000年度予算教書でこの脅威を大量殺戮兵器の蔓延、米大陸への直接ミサイル攻撃の危険性、国際テロリスト、麻薬組織からの攻撃、組織的密入国等と考えていることは第3章で述べた。

 

このような脅威に対処するためには、第2次世界大戦当時のような大陸軍や水際戦闘のみを専門とする大海兵隊は必要が無い。海軍も不要である、というような議論もあちらこちらで聞かれる。しかし、本当にそうであろうか。

米国海軍は今日、米国の歴史の中で初めて世界の公海上をいずれの国の妨害も受けずにパトロールしている。米国が地理的に強力な海軍を必要としてきたのは建国以来の伝統であるが、それがフィリピンやプエルトリコの領有で加速されたことは第2章で述べた。一方、現在の世界情勢では米国が軍事上便利な場所に基地を自由に設けるということはもはや困難になっている。

また、世界の人口の80%、首都の大部分は沿岸から500マイル以内にあるという事実を考えると、クリントン大統領のいう脅威は殆どこの区域内で起ることになる。このことは、1990年代に起きたソマリア、ハイチ、ボスニア、イラク、コソボの例でも明らかである。

 

上記脅威に対し、米軍は瞬時にパンチを与える力を保有する必要があるが、この要件を満たしているのは海軍力のフレキシビリティー、脅威対応速力、陸上基地と無関係のオペレーションである、というのが米国内の一般的見方である。

 

 

 

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