5-4 NSWCCDの転化可能技術例−環境技術
前節で述べたごとく、NSWCCDには即民生転化可能な技術が沢山あり民間からのアプローチを待っているが、本節ではNSWCCDが現在進めている船上廃棄物処理装置の開発状況を通じて米海軍が兵器やセンサー類のみならず環境技術のごとき即民生転化可能な技術の開発にも力を入れている実態をみてみる(参考資料24)。
米海軍は、1970年以来艦艇で常時排出される各種廃棄物の環境インパクトを最小とする技術の開発に取り組んできた。21世紀の艦艇は世界中何処でも、また如何なる場合でも環境問題を起こさず、海の環境を守る当該沿岸国官憲に妨げられることなく活動を継続できる船上廃棄物処理装置を備える必要がある。このため、海軍は21世紀の環境に優しい艦艇の設計ビジョンを作り、コストの安い船上処理システムを作ることにチャレンジしている。この海軍のビジョンの中心となっているのが、NSWCCDに他ならない。
艦艇は廃棄物の量及びタイプがクルーズ船と良く似ているが、クルーズ船と異なる所は艦艇が武器保管に多くの場所をとられているために、市販の廃棄物処理装置は容積、重量が過大で使用不能なことである。また、艦艇に特有な耐衝撃性能の点からも、市販の廃棄物処理装置は使用することができない。艦艇の乗員は、駆逐艦でも数百人、空母では数千人に達する。乗員数が同じ大きさの貨物船に比して圧倒的に多い上に、航海期間も通常でも1か月程度は普通であり、さらに洋上補給を受けて特殊任務に就く場合もあるので、航海期間は更に長くなり廃棄物の量は圧倒的に多くなる。
このような条件に対処するための新製品開発にチャレンジするNSWCCDの努力は生易しいものではないが、その努力は着々と実を結びつつある。
NSWCCDは、種々の固形廃棄物を安全に艦上に保管し、あるいは環境基準に合致するよう処理して艦外に排出する装置を開発してきた。その最初の装置は、プラスチック廃棄物プロセッサー(Plastic Waste Processor:PWP)である。MAPOL73/76及び米国の法規により、プラスチック廃棄物の艦外排出は全面的に禁止されているので、米海軍の全艦艇にNSWCCDが開発したPWPが搭載されている。PWPは、プラスチック廃棄物を粉砕後加熱・圧縮して、取扱いが簡単で、かつ重ねられる円盤状とし、臭気を外に出さないバックに入れて艦上に保管する。
PWPの圧縮率は1/30で、長い航海期間の問題を解決している。PWPの全艦艇への搭載は1998年に完了した。
次にNSWCCDが開発したのは、金属・ガラス粉砕機及び食物・紙・カードボード・パルプ化装置である。金属・ガラスは粉砕機で細かく砕いた後バイオ紙袋の中に入れて、許される海域で海中に投棄する。パルプ化装置は、食物・紙・カードボードを急速に拡散して環境に害のない程度のスラリーとして、艦外に放出するものである。