1999年のコソボ共同出兵では、兵器面から共同出兵したヨーロッパ軍と米国軍の関係があまりしっくりいかなかったといわれている。しかし、政治面を重くみるDOSや議会の国家安全保障の専門家は、むしろUSMLの改訂には消極的である。
ヨーロッパ諸国の軍事技術流出規制もバラバラであり、米国から輸入する軍事技術の内容と程度も各国で異なるので問題は複雑である。1999年11月11日、英、仏、独、伊、スペイン、スウェーデンのヨーロッパ武器製造6大国の政府代表が一堂に会し、軍事産業の強化とリストラクチャリングのために共同歩調を取ることを申し合わせた。一方、10月11日にはブラッセルにEU15か国の外相全てが集まり通常兵器の輸出に関する共通基準(Code of Conduct on Arms Exports)を作成することを話し合っている。ヨーロッパ諸国は、米国のUSMLに不満である。現在、ドイツが米国から輸入しようとしているMEADS防空システム(Medium Extended Air Defense System:MEADS)について、米国は米国内法に基づきある部分の技術を公開しないこと(Black Box)及び米国の定期的検査を条件としているので、両国の軍事技術関係者の関係はギクシャクしたものになっている。ドイツの軍事担当者は、Black Box付きの軍事技術輸出は過去のもであると猛反発している。さらに、米国は開発の初期にはいつも共同開発を呼びかけるが、最終的にはBlack Boxが付くと不快感を示している。
以上のごとき状況の中で、米国でもUSML改革の動きが各方面で表面化している。しかし、これらの動きは未だ政府部内で統一されたものではない。改革に一番熱心なのはDODであるが、DOSはDODの動きを冷ややかな目で見ているといった方があたっているかもしれない。DOSは、省内で独自に軍事技術の輸出規制を緩和する検討を開始すると共に、大統領府のNSCと協力して基準改正の準備を始めている。ただし、DOSの改訂のポイントはヨーロッパと米国の軍事産業間の協力強化である。また、DOSの作業は現在の環大西洋協力方式を取込むだけなので、あまり長時間はかからない予定である。繰り返し述べるごとく、DOSは武器を輸出する企業に対するライセンスの最終決定権を持つ一方、DODはある輸出案件が国家安全保障に有害かどうかを決定する重要な役割を持っている。
1999年9月30日、DODは軍事技術の輸出規制を緩和し、武器輸出ライセンスの取得を早めるDOD案を発表し、同日国防次官の承認を得て武器移転/技術移転白書(Arms Transfer/Technology Transfer White Paper)の名で公表した。この白書には、軍事技術移転に関する多くの改革案が盛り込まれているが要点は下記の3点である。
* 企業から提出された軍事技術情報をDOD内で正確に理解し輸出許可案件を早期決定出来る組織作り。
* USMLの抜本的見直し