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MASEのビジョンは2006年までに建造法の革新によって米国造船業を強力な自立した産業へと脱皮させることで、その結果他の造船国と競争しうるよう効率の良い、コスト効果の高い船を建造し、米国造船業の世界マーケット・シェアを拡大し、同時に艦艇の建造コストを下げ艦艇建造量削減に効果的に対応することによって将来の艦艇建造能力を温存し、更に造船業に対する顧客の満足、造船業の安全性、環境適合能力を向上してコスト・サイクルタイムを改善することを目的としている。

MARITECHとMASEの最大の相違点は、MARITECHがプロジェクトをコスト・シェアリングで進める上で民間側の主契約者の考え方を尊重して進めてきたのに対し、MASEではMARITECHで果たし得なかった研究推進フレーム・ワークを全米の造船所、修理業者、大学、教育機関、政府機関、海軍工廠にまで広げ、産業エンタープライズを形成しエンタープライズの定める基本方針に合うようにプロジェクトを進めることが求められている点である。

 

米国造船所で船舶の建造、改造、修理を行う場合に適用される建造融資保証プログラム、タイトルXIは1936年商船法で定められた歴史の古い助成施策であるが、クリントン政権以前のそれは助成対象を米国市民の米国船主が米国籍船を米国造船所で建造する場合に限り適用され、融資保証額も船価の75%であった。1970年代には81億ドルの融資が行われた。レーガン政権時代にはタイトルXIに基づく建造融資保証プログラムは事実上凍結されたが、レーガンの海軍600隻体制の下艦艇の大量発注で潤っていた米国造船所はあまり問題としなかった。

 

クリントン政権は1993年11月30日成立した造船及び造船所転換法によりタイトルXIを輸出船建造、造船所設備近代化及び再融資の分野にまで広げることを規定し、米国造船業の輸出船市場進出をバックアップする体制を整えた。新タイトルXIは絶対要件として米国造船所建造を規定する以外は、適用範囲は非常に広げられている。

融資保証額は輸出船では船価の87.5%、国内船では75-87.5%にまで引き上げられ、返済期限も最高25年と破格に有利な条件となっている。また、船価として設計費、開発費、検査費、船主支給品、利子、契約後エキストラを含めることが許されている。対象プロジェクトは米国造船所で新造或いは改造される米国籍或いは外国籍の商船、米国造船所の近代化プロジェクトで、米国船主、外国船主、米国造船所からの申請が受理される(参考資料13)。

舶用工業で最も関心の深いのは新タイトルXIにおけるローカル・コンテント要件であるが、タイトルXIを所掌する米運輸省海事局(Maritime Administration:MARAD)では主機等の大物について同等の米国製品を調査し、そういうものがもしあればリコメンドするが強制はしない、つまり基本的に舶用工業製品に対するローカル・コンテントの制約はないといっている。

 

 

 

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