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TRPは次節に述べる7つのプログラムより構成される幅広いプロジェクトであるが、造船業や舶用工業の分野のテーマは幾つかの例外を除いて殆ど取り上げられていない。TRPはDODが実施した最大の商業投資で、約1.19百万ドルを投じて1994年から97年にかけて国防先端技術計画局(Defense Advanced Research Priojects Agency:DARPA)の所掌で実施された。

TRPは軍事民生両用の技術開発に焦点が置かれ、対象開発分野は指令、指揮、コントロール、通信、コンピューター、情報、戦場センサー、損傷処置、エレクトロニクス設計及び製造、機械システム及び材料、武器、生存率等である。

 

TRPを実施するに当たり、関係各省、その他の連邦政府機関の協力体制を確立するために国防技術転換委員会(Defense Technology Conversion Council:DTCC)が設けられた。

DARPAは米国半導体産業の世界市場における復権の切り札となったセミコンダクター製造技術コンソーシアム(Semiconductor Manufacturing Consortium:SEMATECH)のまとめ役として、クリントン大統領からその力量を高く評価されていた。

 

ATPはTRPと関連を有するプログラムで、DOC全米標準技術院(National Institute of Standards and Technology:NIST)が管理するプロジェクトである。ATPはハイリスク・ハイリターンを期待し得る技術の民間企業における開発応用を通じて、米国の経済成長を刺激することを目的としている。ATPはTRPより市場主導型であり、どちらかといえば中小企業に関連したプロジェクトが優先されている。ATPは現在も続けられている息の長いプロジェクトであるが、造船業や舶用工業に関連するテーマは取り上げていない。

 

MARITECは、造船業及び舶用工業の産業基盤を保全し世界市場における競争力を増すために先進技術の開発と応用を促すコスト・シェアリング・プロジェクトで、1993年の造船及び造船所転換法に基づき新タイトルXIと同時に設けられたものである。MARITECHは1994年度−98年度の5年間で、66のプロジェクトが実施された。

 

クリントン大統領はMARITECHもSEMATECHと同じように民間主導で産・官・学を網羅した国家インフラストラクチャーを構築して進めるよう指示したが、1993年当時の米国造船業はそれを許さない程に問題が山積していた。1980年代艦艇建造にのみ注力してきた米国造船業は世界市場で競争し得る船舶の設計、船舶の建造能力を有せず、それらを与えることが急務と判断したDARPAはとりあえずMARITECH前期の期近プロジェクトで設計、建造、マーケット戦略を与え、MRITECH後期でクリントン大統領のいうようなSEMATECHに似た造船業の国家インフラストラクチャーの構築を考えたが、MARITECHの期間内にSEMATECHのレベルに達することは不可能との結論に達し、1998年度のMARITECHの予算の一部を流用しMARITECH高度造船エンタープライズ(MARITECH Advanced Shipbuilding Enterprise:MASE)が計画され発足した。

 

 

 

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