一方、ソ連海軍は1963年世界最初の全ガスタービン推進駆逐艦Kashinクラスを就役させている。
スプルーアンス・クラス及びこれに続く米海軍水上艦艇のガスタービン推進システムは、GEの航空転用型LM2500ガスタービン4基によるガスタービン組合せ機関(Combined Gasturbine or Gasturbine:COGOG)が主流である。
艦艇の推進システムで最も大切な2つの要素は艦の運動性能と消音であるが、COGOGと逆転可能可変ピッチ・プロペラ(Controllable Reversible Propeller:CRP)を組合わせた推進システムは他の如何なる組合せ機関、例えばCOSAGやディーゼル・ガスタービン組合せ機関(Combined Diesel and Gasturbine:CODAG)に比して格段に優れていることが分かっている。
スプルーアンス・クラスではガスタービンの高圧コンプレサーからの圧縮空気の一部を軸系を通してプロペラの先端から噴出させキャビテーション音を防止するプレリー・システムと称する消音システムを備えているが、ガスタービン自体の消音性能と併せてスプルーアンス・クラスの消音性能は抜群である。プロペラ表面の加工精度も消音性能と関係するが、東芝機械のプロペラ表面切削加工NC盤の輸出がココムの規制違反として話題となったのもそれ程古い話ではない。
GEが航空転用型ガスタービンLM2500を売り出した当時の出力は24,000Hp、熱効率は35.8%であったが、パワー・タービンの設計変更等により20年後の1990年には出力31,200Hp、熱効率37.6%に達していた。さらに、1996年GEはLM2500の細部の空気力学的設計を見直し出力39,000Hp、熱効率38.0%のLM2500を売り出した。米海軍は又、LM2500をベースに次世代の復熱式ガスタービン(Intercooled Recuperated Gasturbine:ICR)を開発し、LM2500より更に出力を25%増し30-40%燃料消費量の少ないエンジンを実用化しDDG51 Arleigh Burkeクラスに搭載の予定であったが、エンジンの容積が大きくなりすぎ採用されなかった。
ガスタービン主機の商船への採用は1990年以前はハイドロフォイル艇等の高速船に限られていたが、1990年代に入り一般商船にも採用されるようになり、特に近年高速フェリーボート、高速コンテナー船、クルーズ船等採用される船種も急速に増えている。米国で現在計画されている40ノットの高速コンテナー船FastShipは各々がカメワ製ウォーター・ジェット(合計出力335,000Hp)を駆動する5基のロールスロイスTrentガスタービンを搭載することになっている。
また、ロイヤル・カリビヤン社は自社のクルーズ船推進システムにGEのガスタービンを採用することを決定している。クルーズ船へのガスタービン採用の狙いは、ガスタービンの音が小さく排気がクリーンな点である。