世界最初の原子力推進水上艦は1961年9月に就役した米海軍のミサイル巡洋艦ロングビーチ、2番目は同じく米海軍の空母エンタープライズである。米海軍はその後原子力巡洋艦を8隻建造した。1992年に保有していた48隻の巡洋艦のうち、8隻の原子力推進以外の艦は全てガスタービン推進である。これらの巡洋艦は2000年初頭までには27隻に減少するが、このなかには近年中に退役する6隻の原子力巡洋艦が含まれている。冷戦構造終結後巡洋艦の持つ役割は急速に薄れ、順次駆逐艦にその機能を移していくことが決定されている。現在米海軍の現役の駆逐艦は全てガスタービン推進であるので、空母以外の水上艦が全てガスタービン推進となるのもそう遠いことではない。
原子力空母はエンタープライズも含め9隻建造されているが、エンタープライズも近代化工事を実施し現役に復帰しているので2000年初頭の現役空母は原子力推進空母9隻、通常の蒸気タービン推進空母3隻である。原子力推進水上艦の技術は1960年代の初期には早くも商船への応用が試みられ、原子力商船サバンナ号が建造され試験航海が繰り返されたが、高級技術者に対する過大な人件費、その他環境問題等により商船には不向きとの結論に達した。その後、日本やドイツで建造された原子力試験商船も同様な結論であったため、原子力推進は商船には転用されていない。
現在、水上艦の推進システムの中心はガスタービンである。前述のごとく、米海軍が本格的に採用したのは1972年のスプルーアンス・クラスの駆逐艦からであるが、ガスタービンを艦艇推進システムとして採用したのは英海軍が最も早い。英海軍は1950年代にはTribalクラスのフリーゲート艦及びCountyクラスの駆逐艦に蒸気タービン・ガスタービン組合せ機関(Combined Steam and Gas Turbine:COSAG)推進システムを採用している。これらの艦に採用されたガスタービンはいずれも産業型ガスタービンであったが、その後英海軍では航空機に使用されているガスタービンを改良して艦艇に利用する研究を始め、1967年にはそれ以降の艦艇用ガスタービン主機は全て航空転用型とするとの決定を下している。