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(1) 業界の統合再編のためのM&A

M&A戦略の狙いは、それぞれの産業の市場動向、競合の状況、成熟度、技術動向、規制の動向等により異なってくるが、米国造船産業、特に海軍艦艇市場をコアとする造船企業における最近のM&Aは、需給のアンバランスによる競争激化に対応するための業界の統合再編が目的であることは明らかである。

1998年10月のジェネラル・ダイナミクスによるNASSCO買収を契機として、これに対抗するために1999年1月にニューポート・ニューズ造船とアボンデール・インダストリーズが合併を発表した。この合併を潰すために1999年2月にジェネラル・ダイナミクスが仕掛けたニューポート・ニューズ造船の買収は、国防総省の反対にあって実現しなかったものの、残るリットン・インダストリーズはその動静を見極めたうえで合併合意がなされた2社に対して1999年5月に買収を提案し、最終的にはニューポート・ニューズ造船からアボンデール・インダストリーズを掠め取ることに成功した。

業界の統合再編のための戦略としてM&Aを検討する場合に、自社がM&Aを行わなかった場合のダウンサイド・リスクを考えておくべきであることはよく指摘されるところである。また、業績が苦しくなったり、合従連衡を組むべき相手が少なくなってからでは、統合再編のためにとるべき戦略の幅が狭められてしまう。前述したような米国造船産業におけるダイナミックかつ迅速なM&A対応の事例を見れば、各企業が常日頃からM&Aを視野に入れて業界の統合再編に向けた事業戦略を策定し、適宜これを見直していることは明らかである。

 

(2) 集約統合後の売上規模は20〜30億ドル

今般の統合再編により米国の造船産業は、トップのジェネラル・ダイナミクス(32億ドル)を除き、概ね20億ドル弱の売上規模を有するグループに集約化されたことになる。これらの集約化により、営業、設計/エンジニアリング、調達等の分野で相当のスケールメリットが生じることが期待されている。

 

 

 

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