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また、1970年代前半にはコンテナ船やタンカー、1980年代前半にはオフショア掘削リグを主に、商船の建造実績も多数ある。1999年3月9日には、アメリカン・クラッシック・ボイエージ(AMCV)(イリノイ州シカゴ)と総トン数72,000GT、旅客定員1,900人のハワイ航路向け大型内航クルーズ船2隻の建造契約(1隻のオプション付き)を締結している。本クルーズ船は米国で建造されるクルーズ船としては最大のものであり、米国で大型クルーズ船が建造されるのはインガルス造船が40年前にSS BRASIL及びSS ARGENTINAを建造して以来の出来事となる。同造船所は現在11,000人の従業員を雇用しており、米国では最強のエンジニアリング・設計能力を有すると言われている。

 

1999年5月のリットン・インダストリーズによるニューポート・ニューズ造船及びアボンデール・インダストリーズの買収提案の狙いが、リットン・インダストリーズの生き残りのためであることは明らかである。

1999年1月に発表されたニューポート・ニューズ造船及びアボンデール・インダストリーズの合併がもし成立すれば、1999年売上高26億ドル、従業員数24,000人と、ジェネラル・ダイナミクスの造船部門にほぼ匹敵する大型造船会社が誕生することになる。これに対してインガルス造船の売上高は10億ドル、従業員数は11,000人であり、「新ビッグ2」の半分以下の事業規模である。しかも「新ビッグ2」は、原子力潜水艦又は原子力空母という現在のインガルス造船にはない事業分野を有しており、海軍のニーズに柔軟に対応できる強みをもっている。今後の国防需要等を考えれば、このままではインガルス造船が将来この2社のいずれかに吸収されるおそれがでてくる。

これを防ぐためにリットン・インダストリーズは、ニューポート・ニューズ造船とアボンデール・インダストリーズの合併を潰し、アボンデールを自らの傘下に入れることにより、今後のサバイバル競争に勝ち残ろうとしたのである。このためにリットン・インダストリーズは、ニューポート・ニューズ造船からの合併提案よりも有利な条件の買収提案をアボンデール・インダストリーズに対して提示した。総額5億ドルの現金による株式買取りというリットン側の買収提案は、約4億7,000万ドル相当の株式提供というニューポート・ニューズ側の合併提案と比べて、金額面においても、また全額キャッシュ取引という条件面においても、アボンデール側に大きなメリットがある。

 

 

 

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