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1] 規制緩和の実施

米国におけるM&A活動に大きな影響を与えた第1の動因は、レーガン政権以降に多くのビジネス部門において行われた政府の規制緩和政策である。

1980年代にはいって、日本経済の成長等とともに、世界経済における米国の地位が相対的に低下していった。このため、「強い米国」を標榜し、産業形成に対する政府不介入の政策をとるレーガン政権下においてM&Aによる企業資源の効率的配分や企業の活性化のメリットが評価され、これに対応して産業界からはM&Aを推し進めるための独禁政策の柔軟な運用等について多くの要望が政府に寄せられた。

このような背景のもとで実施に移された独禁政策の緩和をはじめとする一連の政府規制緩和策の結果、運輸、テレコム、エネルギー、金融サービス等の産業分野において、マーケットシェアの拡大を目指すためのM&Aや、事業ポートフォリオを再構築するためのダイベストメントとM&Aが活発に行われるようになった。

フォーチュン誌は、規制緩和に伴う最近の企業のM&A観について、次のように指摘している。

 

企業は驚くほど賢明な理由でこれまでにないほど合併している。企業には他に道がない。形、規模を問わず、何千もの企業が百年に一度の大嵐に匹敵するビジネス風土に直面している。規制緩和により数々の産業そのものがひっくりかえった。メディア、公益事業、銀行、電話等の産業は新しい現実に適応しようと必死になっている。大型化が何よりも重要になっている。あらゆる産業において、ニッチを対象にした小型企業が競争に伍していくのはより厳しいものになっており、競争相手の傘下に下らざるを得なくなっている。

企業はまた、次に何が起こるかを誰もが予測できず、何が起こってもおかしくない時代に、独自の道を切り開こうとしている。1995年のCap Cities/ABCとディズニーの合併によって、その後のトレンドが設定された。この合併は、世界がどの方向に動くか大きな賭けに出るとともに、特定の方向に世界を動かす切っ掛けとなる役割りを果たしたのである。1990年代の大型合併・買収の多くがそうであるように、この取引きは大成功か大失敗のどちらになってもおかしくない賭けであり、結果が出るまでには何年もかかるだろう。

 

 

 

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