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第5章 今後の舶用機器メーカーの目指すべき方向(船舶管理の観点からの検討)

 

1. 船舶管理会社の舶用機器メーカーに及ぼす影響

船舶管理会社はISMコードの強制化や船主の競争力強化に伴う船舶管理業務のアウトソーシング等を背景として今後益々発展するものと予想される。

今回調査対象としたような代表的な船舶管理会社は、100隻〜300隻もの船舶を管理しており、これらの船舶の保守整備を実施していることから、保守整備を通して舶用機器メーカー及び供給者に影響力を持っている。また、代表的な船舶管理会社は、その技術力を活用し、新造船の監督業務やコンサルタント業務を実施しており、今回調査した英国の2社では新造船の搭載機器の決定にはそれほど関与していないとのことであったが、今後は新造船の搭載機器の決定に関する発言力が強まるものと思われる。

一方、船舶管理会社は、船主が予算を渋った場合、ISMコードの要件に適合できなくなり、同コードの適合証書(Document of Compliance)を取り消される可能性がある。その意味では必ずしも強い立場にあるわけではない。しかしながら、今回調査したサイプラスの会社は、十分な保守整備ができないような船舶については管理を引き受けないと明言しており、船舶管理会社がこのような厳格な立場を維持して行く限りは、舶用機器メーカー及び供給者に及ぼす影響は弱まることはないと思われる。

 

2. 舶用機器メーカー、供給者が目指すべき方向性

(1) 船舶管理会社は、部品の購買を含む保守整備や新造船の搭載機器の決定に関し影響力を強めると予想されることから、舶用機器メーカー及び供給者は、従来からの売り込み先である造船所や船主に加え、船舶管理会社との関係を強化していくことが重要と考えられる。

このためには、船舶管理会社への積極的な情報発信が重要であり、IMPA (International Marine Purchasing Association。資料13参照。)等の国際組織への参加や、海事展への参加も有効な方策と思われる。なお、情報発信の関連で、船舶管理会社は舶用機器のトラブル情報の迅速な開示を要望しているが、これについてはエンドユーザーである船舶管理会社との信頼関係の構築という意味からも検討課題の1つと思われる。

 

(2) 船舶管理会社は、船舶管理業務の効率化を図るため、情報技術の活用に積極的に取り組んでいる。また、船舶管理会社は部品調達時間の短縮を重要事項の1つにあげている。

このため、舶用機器メーカー、供給者は、このような動きに十分対応できるようにすること、あるいは積極的にこのような動きをリードしていくことが重要と考えられる。具体的には、舶用機器購買ソフトのIMPAのETS Formatの利用やMAN B&WのCoCoS(資料14参照)のような機器メーカー独自の購買ソフトの開発・提供により、電子情報技術、通信技術を積極的に活用し、より迅速に、より低コストで部品等の提供ができる方策を検討する必要がある。

 

 

 

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