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(1) 保守整備

船舶の保守整備計画は、機器製造メーカーの推奨する保守整備をベースに各社の経験や各船舶の運航状況等を考慮して定められている。また、保守整備計画は予算にも縛られることから、計画を作成するに当たっては船主と予算を含めて調整を行うのが通例のようである。

保守整備の管理へのコンピュータの利用が増えており、A社はノルウェーSpec Tec社のAMOS-Dを、H社は一部の船舶にはAMOS-Dをその他の船舶には自社ソフトを利用している。また、各社とのインタビューでは話題にはのぼらなかったが、舶用機器メーカーが販売機器の保守整備管理ソフトを開発・提供している例(MAN B&Wの CoCoS (Computer Controlled Surveillance)等)もある。

また、A社はポンプ、コンプレッサー等一部の機器については、機器の状態を分析するための状態監視を実施し、カレンダーベースの保守整備に加えて、状態監視結果を考慮して保守整備を実施している。同社は保守整備の今後の方向性として、状態監視等による危険評価を取り入れていきたいとしている。D社も保守整備の今後の方向性として、温度監視や振動監視等の状態監視が益々導入されて来るであろうとしている。

なお、ISMコードの導入により、1]船主や船舶管理会社のSafety Cultureの向上、2]保守整備に関する船上と陸上の責任・役割の明確化、3]保守整備のより一層のシステマティックな実施、等が図られるものと予想されることから、1998年7月のISMコードの強制化が保守整備に与えた影響を聞いたが、各社とも同コードの強制化前から高水準の船舶管理を実施しており、同コード強制化の影響はなかったとのことである。また、今後も保守整備の方針については、船舶管理システムに基づく微調整はありうるが、基本的には変わらないとのことであった。

 

(2) 購買

4社とも100隻〜300隻という多数の船舶を管理しており、スケールメリットを活用して低価格での購買、円滑な購買に努めている。例えば、D社は主要な供給者との協力協定の締結や潤滑油、ペイント等の年間購入契約の締結により、コスト低減を図っている。また、A社は1999年6月に部品調達のためのジョイントベンチャー企業Marine Contracting Associationを設立し、部品調達コストの低減を図っている。

部品の調達に関しては、A社、C社、H社は、有力な調達先としてOriginal Equipment Manufacturer (OEM)1をあげている。この理由としては、A社はOEMからの大量購入によるコスト削減効果を、C社はOEMの部品の信頼性、在庫の存在、価格の安定性をあげている。

 

1 OEM製品とは、様々な解釈があるようであり、ある日本のメーカー、商社によれば、OEM製の部品と純正部品とは全く別物であるとのことである。今回の調査では、船舶管理会社が"OEM"をどのような意味で使っていたかは不明。

 

 

 

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