III. 付録
1 船種ごとの燃料消費率の推定
燃料消費率を推定する際に、年間航行距離、年間輸送総量、航海日数等が把握可能であれば推定も容易になるが、全船舶を対象にこれらの情報を入手することは困難である。
そこで、船種ごとの燃料消費率(t-Fuel/隻・日)については、1986年及び1991年、1996年、1999年の日本船舶明細書(以下、船舶明細書)に記載されている1日あたり燃料消費量を基礎データとして推定することとした。
II. 調査の内容1.1で示したように、本研究では船種・船型・船齢別の燃料消費率と、これに相応する稼動量(年間輸送総量または年間航海日数)を求め、その積として年間燃料消費量(t-Fuel/年)を算出し、CO2排出量に換算する。基本となる船舶明細書記載の燃料消費率の単位はt-Fuel/隻・日であるので、ここでもそれを基本とし、船種・船齢別に航海1日あたりの燃料消費率とDWTの関係を求めることとした。
ここで用いる船舶明細書記載の1日あたり燃料消費量データは、新造時(試験航海時)の最大航海速度時のものであり、船毎に航海速度が異なる。航海速度と燃料消費率の関係については式1に見られる関係(勝原、1996)26が一般に用いられる。そこでこの式を用いて、船種・船齢毎に同一の速度で航行した場合の燃料消費率を船舶明細書データから求め、この値とその船のDWTをプロットすることにより、両者の関係式を得ることとした。
ここで
FUEL :航海速度時の燃料消費量(t-Fuel/日)
FUEL0 :船舶明細書記載の燃料消費量(t-Fuel/日)
SPD :航海速度(knt)
SPD0 :船舶明細書記載の満載航海速力(knt)
β :定数(船種により異なる)
なお、式1におけるβの数値は理論値としては3とされているが、勝原(1996)26は実測値としてβの値を求めている。船種別の燃料消費率の推定方法は以下のとおりである。
1.1 タンカー
1986年、1991年、1996年及び1999年の船舶明細書からは、合計215隻につき燃料消費率データが得られた。船齢別、船型別のサンプル数は表1.1-1に示すとおりである。
船舶明細書には蒸気タービンを主機とするものが130隻含まれていた。タービン主機船は主として1970年〜1980年建造の10万〜14万トンクラスに多く記載されていたが、おそらくその後、ディーゼル主機への換装が行われていると考えられる。しかし、これらの古いタンカーは既に解撤あるいは売却されており、我が国では登録されていないため、主機換装などの変更内容及び実施時期は把握困難であった。タービン主機とディーゼル主機では燃料消費率が全く異なるため、正しくは世界でのそれぞれの存在比率を把握しておくことが望ましい。ここでは、燃費の悪いタービン主機船は存在していても極く僅かであり、結果に大きな誤差はもたらさないと仮定し、以降はディーゼル主機船についてのみ考えることとした。
26 勝原光治郎(1996)「国内海上輸送におけるエネルギーの消費量」、船舶技術研究所研究発表会(平成8年度秋季第68回)、p286‐291