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5 外航船舶の運航に伴う温室効果ガスの排出量削減対策に関する調査

 

5.1 CO2削減対策の評価とその実用性の調査

5.1.1 船舶における輸送エネルギー効率の向上の歴史

外航船舶全体からのCO2排出量(t-CO2/年)は下式のとおり燃料消費量(P:t-Fuel/年)に比例するため、CO2排出量の削減は燃料消費量(P)の削減に他ならない。

EMCO2=P×EFCO2

ここで

EMCO2:燃料の燃焼により生じるCO2排出量(t-CO2/年)

P:燃料消費量

EFCO2:排出係数;MFOの場合2,999g-CO2/g-Fuel(1.4参照)

船舶輸送は、他の輸送機関と比較すると一度に大量の輸送ができる、つまりスケールメリットを持ちあわせた輸送手段である。運航経営上においても、燃料費はランニングコストの大半を占めているため、「輸送量あたりの燃料消費量」である輸送エネルギー効率(RT:タンカー・バルカーではt-Fuel/トンマイル、コンテナ船ではt-Fuel/TEUマイル)の改善は、コスト削減の対象としてこれまで多くの努力が払われてきた。

輸送エネルギー効率(RT)には「船舶の1隻あたり1日あたりの燃料消費量」である燃料消費率(C:t-Fuel/隻/日)以外に、運航速度、積荷率などの要素が影響する。輸送エネルギー効率(RT)の改善について過去20年のトレンドを振り返ると、燃料消費率の改善によるところが大きい。同じ船種・船型で比較した場合、過去20年の間に燃料消費率はおよそ20〜30%程度改善されてきた。

なお、LCA的観点から考えた場合、船の建造・解撤等の際の材料・燃料などに消費されるエネルギー由来のCO2排出量もあるが、この排出量は建造費の比較的高い原油タンカーやアルミ船体の漁船でも船の寿命全体におけるCO2排出量の2%弱にしか過ぎないという試算もある(亀山など、200018)。従って、運航に伴い消費される燃料以外で生じるCO2排出量はここでは考慮しないこととした。

1970年代の石油ショックを契機に船舶運航の形態には大きな変化があった。

具体的には、船舶の大型化や専用船化による輸送単位の増加、荷役効率の改善、そして船舶単体の効率の改善が挙げられる。輸送単位の増加は、タンカー、鉄鉱石及び石炭など大規模輸送を必要とする荷種を対象に特に顕著であり、専用船化と船舶の超大型化が進んだ。

一方、荷役効率の改善はコンテナ輸送に代表される。ドアツードアの輸送形態は世界の流通形態を大きく変化させ、海運業の小口輸送に占めるコンテナ輸送の割合は大きな伸びを示した。今後も、ハブ港間の高密度な定期運航による平均積荷率の向上や40ftコンテナの陸上一貫輸送など、荷役効率の向上の余地は若干残されていると考えられる。

一方、プロペラの低回転数化に伴う推進効率の向上、機関の熱効率の高効率化、及び船型の改良の技術開発もこの20年間に進んでおり、船舶の輸送エネルギー効率の改善に大きく寄与している。

 

18 亀山など(2000)、船舶からのCO2排出に関するライフ・サイクル・インベントリ分析、第4回エコバランス国際会議講演集

 

 

 

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