4.1 情報交換の目標と施策
造船所・舶用機器メーカ間において現実の業務で交換されている設計・技術情報は多種多様である。このような設計・技術情報を整理・体系化し、すべての情報についてもれなく表現形式を定義することは困難である。また、仮にすべての情報の表現形式を定義したとしても、その労力に比して効果はそれほど大きくないであろう。造舶Webシステムの効果を最大化するためには、まず造船所・舶用機器メーカ合意の下に情報交換の目標を明らかにし、その目標達成に不可欠な情報交換テーマに絞り込んで情報表現形式を開発する、いわゆる重点指向のアプローチが重要である。
本項では、まず、重点指向の見地から造舶Webにおいて適用した目標施策体系化のアプローチの概要を論じ、次に、各品目での検討結果を述べる。
目標施策体系の作成プロセスでは、プロジェクトの最上位の目標を下位の具体的目標にブレークダウンし、さらに具体的目標を達成するための施策を抽出する。目標施策体系化は、上位の目的から手段を階層的に導き出すトップダウンアプローチであり、体系化の議論を通じて目標と施策の相互関係が明らかになり、プロジェクト内で意図を共有した上での施策実施が可能になる。
図4-1に品目別検討のベースとなる造舶Web目標施策体系の標準形を示す。この標準形は、平成10年度において作成したものである。個々の品目別検討では、この標準形の目標施策体系をもとに、品目固有のニーズや業務特性を織り込みながら個別品目の目標施策体系を作成した。
目標施策体系に示す業務及び情報システムに関する施策は、造船所・舶用機器メーカ各社の社内業務・システムに対する要件を示すものではなく、あくまでも造舶Web、すなわち造舶間の設計・技術情報交換インフラ作りに対する要件の提示である。しかしながら、造舶Web参加各社が実現する効果は、社内業務・システムを造舶Webの施策に適合させる度合いによって異なるので注意を要する。
以下、造舶Webにおける目標施策体系の内容と、品目別の検討結果について述べる。
(1) 目標施策体系の内容
(a) 造舶Webの目標
目標施策体系の最上位に位置するものが「造舶Webの目標」であり、これに基づいて業務施策への下方展開を行った。この造舶Webの目標は、プロジェクト推進における一種の運営指針として選別・整理した目標であり、当然のことながら品目別検討を進める際の基本方針として尊重されなければならない。したがって、いずれの品目の目標施策体系化においても、造舶Webの目標は最上位目標に位置づけられ、これを起点として目標の具体化及び業務施策の検討を行った。