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また定型的な質問などはQ&Aライブラリ等を用意しておけば顧客が自分で覗いてくれるなど、些末な顧客対応から解放されるなどによって、生産者はより創造的・本質的な業務にその経営資源を集中して質の高い商品を供給できることになる。更に言えば、今後はそのような体制をいち早く整えた生産者のみが顧客のより高い評価・満足(CS; Customer Satisfaction)を得て、サプライチェーンの一員としての存続を許されることになるとの厳しい見方も出てくる。このように、情報交換の電子化は、顧客と生産者双方に、そのあり方についての大きな変化を今後もたらすと考えられるのであって、そのような背景を元に、本プロジェクトはその草案作りが平成9年秋より開始され、翌10年5月に3ヶ年の開発研究プロジェクトとして正式発足した。

なお、本プロジェクトに先立って以下の二つのプロジェクトが実施されている。

 

船舶CALSプロジェクト

情報処理振興事業協会(IPA)からの受託でH8〜H9年度に実施されたプロジェクトで、正式名称は「造船・船社・船級協会間における技術情報の電子的交換に関する実証実験」。造船所(7社)、船社(1社)、船級協会間で、コンピュータネットワークを利用した技術情報の共有化を実現するための各種基盤技術について実証実験を通して検証するのが目的であった。

 

船舶ECプロジェクト

同じく情報処理振興事業協会(IPA)からの受託でH9〜H10年度に実施されたプロジェクトで、正式名称は「企業間高度電子商取引推進事業:造船・舶用工業界の電子商取引における企業間情報共有の実証実験」。上記の船舶CALSの後継プロジェクトとして、その成果を継承すると共に、情報交換対象を造船所と舶用機器メーカ間の設計資材情報に移し、造船業の資材調達業務の電子化への技術基盤作りを目的として造船7社と舶用機器メーカ4社、船社1社及び船級協会が参画した。

造舶Webプロジェクトは、技術的にはこれら二つの先行プロジェクトを更に継承するものであるが、前二者が企業間の電子的技術情報交換・共有標準の実用性を検証するシステム構築という、システム技術開発を中心としたのに対し、造舶Webは造船・舶用工業界全体を対象とした実用化プロジェクトとして位置づけられ、システム開発よりも、舶用機器情報の交換のタイミングとその項目・形式の標準化の方により重点が置かれた。すなわち、多数の、それも大企業だけでなく中小メーカも含む、企業が参加して実施されるため、システム技術的にはハード、ソフトの両方とも極力その敷居を低くしておく必要が有る。それゆえ、本プロジェクトのシステム開発では、先行プロジェクトのシステム開発成果・知見を継承・有効活用する一方、その実装に当たっては極力COTS (Commercial Off The Shelf;商用既製品)ソフトを利用する、という方針を採った。また、造舶Webなる通称の由来であるWorld Wide Web(Webの原義はクモの巣)、すなわちインターネットのような公共財を通信ラインとして利用するという選択も、安価でオープンという造舶Webの基本的な考え方から来たものであった。

 

 

 

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